第14話 変化
「王国」をまもるための騎士団に入りたかった。
小さい頃から剣を振るって、たくさん強くなろうとした。
けれど、十歳になったとき、兄や父から言われた言葉は「おまえは女だから騎士にはなるな」という言葉だった。
運よく騎士団にはいれて騎士になれても、きっと周りにはついていけない、と言われた。私が「なんで」と聞くと、「女だから」という。
女性の身体では男性の身体には追いつけないのだと言う。
そんなのは、屁理屈だと思った。
けれど、十四歳の頃、いままで自分より弱いと思っていた弟に負けた。「強くなれない」という言葉が、傷口にしみていたかった。
そんなときに、王国の王子様が、代々騎士として王国に仕えてきたアウィ家にやってきた。
彼の瞳は炎のように赤く、燃え上がっていた。
髪の毛は黒く、黒い髪は珍しいので「賢さの象徴だ」と言われていたのをおぼえている。その王子様は魔術の天才と呼ばれていた。
私はセンチメンタルになっていて、「天才」の顔なんか見たくなくて、部屋にこもろうとしていたけれど、運悪く鉢合わせてしまった。
父が「じゃじゃ馬娘に困っている」というような顔と声をして、王子様に「娘が騎士団への入団を諦めてくれんのです」と言った。
私は腹が立って、俯いていた。
もうすこしで涙でも出てしまいそうな頃で。
彼が言った。「入れるよ」と。すると父は負けじと「しかし、女だから強くはなれんでしょう」と王子様に言った。王子様は間髪入れずに「私の母は王だよ」と笑って言ってくれた。
それから「俺も夢があるんだ」と言ってから、「一緒に頑張ろう」と言ってくれた。
私が騎士団に入団したのは、それから四年後の十八歳八ヶ月のころだった。その頃、王国は混乱に満ちていた。
王女様が死んでしまったのだ。殺されたのだ。
それからも色々あって、王子様が消えた。
魔王になって現れた。
彼は起姿解醒に至っていた。
最初は彼のことを「国の王になるのを逃げたくせに魔王っすか」と小馬鹿にしくさっていた騎士団が彼を捕まえようとしてみても、彼はもともと錬金術のうまい人で、物質の増減を操られ、物質間の結びつきを操られ、なんやかんやと逃げられた。
そうしているうちに、彼は魔術を昇華させた。
魔王術、と言われていたし、彼も自分でそう言っていた。多分入っちゃいけないスイッチが入ってしまっているんだと思う。
私はその魔王術を二度見た。
一度目は騎士団の魔王討伐隊に志願して、彼に挑んだとき。二度目は火山が爆発して王国が噴石に潰されそうになった時の結界術で。
魔王術は人類にも再現できるのではないか、と騎士団にいた魔術を扱いやすい女性である私に白羽の矢が立った。
魔術はいちども使ったことがないから、苦手だった。
案の定、私には魔王術どころか魔術すらつかえなかった。
彼はどんどんと人を殺していった。
大量殺人鬼、一家が離散してしまう程の借金を負わせた詐欺師、やくざ、エトセトラ。
私の知る彼はそういう事をするような人ではなかった。
会ったのは一度きりだったけれど、それでも彼の評判はよく聞いた。
とても優しくて頼りになる人。
彼は女王様を失って、この国の嫌なところばかり見て、ほんとうに嫌気が差して、人間の浄化を行うようにしはじめた。
ああ、もう、ほんとうに昔の彼ではないのかな。
そんな事を考えた。




