第11話 頭部
一つめ。首を縦に斬り付ける。放置しても死ぬ。一秒。
二つめ。腹を斬り付け、内臓を引きずり出す。三秒。
三つめ。引きずり出した内臓で首を絞め殺す。二十秒。
四つめ。火球を飛ばしてきたのでそれを躱して顎下から脳にかけて短刀を突き刺して、殺す。一秒。
五つめ。火球が飛んでいった先に蹴り飛ばし燃やす。一秒。
六つめ。勢い良く剣を振るってきたので躱し、剣を奪い、頭と身体をきりはなす。二秒。
七つめ。子どもの姿を真似ていたので、頭を蹴りつぶす。十五秒。
八つめ。胸部を蹴りつけ心臓を止め殺す。一秒。
移動時間を含め、計一分。
「一分だ。なぜ同時攻撃をしないんだ‥‥‥」
そうしているところに、一人の魔族が現れる。
右腕部に神皮が形成される。
起姿解醒「縛り憑け」
──使用──
天井から縄が現れ、ケイムを縛り付けるとぶら下がる。
脚は自由なのだけれど、身体に力がはいらない。
動けば死んでしまうかもしれないという嫌な想像で力がはいるのを無意識のうちに避けてしまっているらしい。
そういう魔術なのだろう。
魔族は手に棍棒を持っている。
「これでお前をたくさん殴って、殺す。特に頭を狙う」
「‥‥‥口数が多いな。この際黙ってやりなよ」
「それもそうだな」
魔族ユリガはケイムの体をただひたすらに殴りつけた。
自分が優位に立っていることを確定すると、「あの男連れてこい」と隠れていた部下に命令して、そこにキツキが現れた。
殴られる。殴られる。殴られる。
頭を重点的に殴られて、脳が揺れる感覚と、激痛のなかで味すら感じそうな、鈍い感覚が広がっていく。目が潰れそうなので、顔を背けると、一際強い一撃が入れられる。頭の中で昔を思ってみる。魔王として君臨していた頃のこと。自分も何度か頭を執拗に狙ったいじめをしたことがあった。あの時の相手もこういう気持ちだったのかと考えると、酷い事をした。相手が罪人であれば何してもいいと思ってしまっていたんだろう。
ケイムは昔の姿を重ねながら、ただひたすらに隙を伺う。
起姿解醒は使えない。魔力が練れない。
縄に吸い取られてしまうんだろうなと細目で分析。
なんだか頭が痛い。痛い? 本当に痛い? 痛い痛い。本当に痛いよ。でもなんだか痛いだけじゃなくて仕方がない気がする。なんだか、入ってはいけないスイッチが入りそうだった。
「魔王様もこうなるとただのハエだな‥‥‥! ハァ、ハァ‥‥‥」
ユリガはすこし、不思議に思っていた。
こいつ、二時間くらい殴り続けてるのに全然死なねぇな──と。
ずーっと瞬きひとつせず、ユリガを見つめている。数十分前から口角が上がり始めている。ゾッ‥‥‥とする。
「ハァ‥‥‥ハァ‥‥‥」
死なない。まったく死ぬ気配がない。
「なんで死なねぇんだお前‥‥‥?」
「だって君の力が弱いからァ」
ケイムは身を丸め、両脚をユリガの首にかけると、そのまま首を折り、殺害。縄が消えると、立ち直る。ユラユラと揺らぎながら、ふわふわと笑う。
「人間ってのは弱いんだよ。だから護らないとならないっていうのは、今生でわかったよ。アウィが護ってくれた世界だ。恩がある。俺は俺の間違いを正さないとならない。彼女は約束を守ってくれた。なら俺は彼女が変えたこの世界を守る。そう決めたんだ」
のこった魔族を睨みつける。
睨まれた魔族は急激なストレスにさらされ、心肺停止に至る。
「大丈夫かい、キツキ。俺のせいでこんなくだらない事に巻き込まれてしまってごめん」
「怪我、大丈夫‥‥‥?」
「大丈夫。俺は、強い子だから」




