幕間1:空原操と若き日を追う夢
これは操の過去、
世界樹が富士山へ転移してくる前の話となる。
――――――――――――――――――――――
「あーあ、魔法が使えたらなぁ~!」
操は友人の山口と斉藤と共に下校中。
田舎の帰り道、学生しかいないバスに乗りながらと話している。
「山口分かるゥ~!操、魔法できるんだったら何したい?」
「魔法……魔法ねぇ……なんだろうね。」
「出た出た、操のそのなんかノリ悪い感じ。」
中学生の特有のノリ、今言われても何の感じだったんだとなる。
「そんなんじゃなくてさ、
色々出来そう過ぎてすぐに思いつかなくね?
逆に斉藤が言ってみろよ。」
「あ~確かに、えーそうだなぁ~。
ランプの魔人みたいななんでもできんのが最強じゃね?」
「願いが叶うってやつ?それはズルだぞ。
どんな魔法でもいいってどんなこともできる魔法じゃないだろ。」
操は、青い魔人とかが出てきて、
すごい早口でなんでも叶えてくれそうだなとか考えていた。
「文句が多いな~操は~。
じゃあ俺は、雨の日の雨を全部止められる魔法とか?」
「お、いいね、山口。時を止める魔法じゃん。
スタンド能力みたいな話になってきた。」
便乗して斉藤が漫画の話を持ち出す。
「スタンド?何言ってんだ?」
「あ~山口、お前漫画とか読まないんだったな。
じゃ知らんか~。」
煽る斉藤。
「あ、ウザ。斉藤嫌いだわ。
で、操は結局何がしたいんだ?」
俺は魔法で何がしたかったんだろうか。
「俺はね~……。」
――――――――――――――――――――――
「っ!はぁ……はぁ……。」
酷い寝汗だ、夢を見るといつもこう。悪夢で無くても。
過去の思い出だったか、こんなことを話したんだろうか。
ちゃんと覚えていない。
小さい頃から田舎でずっと過ごしていたけれど、
妄想膨らむ中学生であれば普通の会話だ。
「あの時の俺はなんと答えたんだったかな……。」
思い出せない。どうしても。
夢だからなのか、間違った記憶なのだろうか。
操は、もう一度眠りにつく。
――――――――――――――――――――――
蝉の声が響く。
広い空き地で木陰に隠れながら、夏を過ごす。
片手にはエアーガンが握られていた。
操はFPSの影響で銃が好きだった。
飛んでいる鳥に標準を付けてパンっと、
エアーガンを撃ってみる。
当然、鳥に反応はない。
BB弾はプラスチック製の弾で風に煽られやすい。
「またはずれか~。」
お祭りで買ったエアーガン。
小さい頃から操は飛び道具に憧れがあった。
弓、パチンコ、銃。
そういうものが子供にとっては何よりも夢があった。
「暇だなぁ……。」
誰も居ない空き地、木陰の下で一人の子供はつぶやく。
昔からインドアでゲームばかりやっていたら
親に怒られて外に飛び出して行った。
だからと言って田舎なので娯楽らしい娯楽も無く、
そのままぶらぶらと日陰で座る。
その子供は何故か太ももに銃口を向ける。
そして引き金を引く。
――――――――――――――――――――――
「だッ!……そんなこともしたっけか……。」
また目を覚ます。
あの時は激痛で大泣きをしたのを覚えている。
なぜそんなことをしたのか、好奇心とは恐ろしいもので。
誰も居ない空き地で大泣きしながら銃を片手にし、
家に帰る子供を見て、両親は何を思ったのだろうか……。
フリーターとして過ごすようになって、
友人とも疎遠になり、地元に残ってる同世代はかなり減った。
大人になるというのはこういう事なのだろうか。
「はぁ……そろそろ俺も、都会に出てみるかなぁ……。」
蛙の鳴き声が響く暗い部屋の中。
目的も無く、操は都会に移り住むことを決める。
操の運命が大きく動き始めるのは、もっと先の話……。




