第4話:西寺衛と間東解斗
操は状況を飲み込むのに苦戦していた。
桜の花が散る暖かい風の流れの中、
椅子に座っている金髪ヤンキーと相対しているからだ。
沈黙が流れる。
「おう、オレサマも名乗ったんだ。てめェも名乗るが筋だろうがよォ。」
ヤンキーに正論を言われた。
「えっと、僕は空にはらっぱの原で空原。
下はあやつるで操って言います。」
「おう、話が分かる奴は嫌いじゃねェぜ空原クン。
ま、くつろげる空間ではねェが座れや。」
西寺が指を動かすと椅子が出現し、膝カックンの要領で操を座らせる。
「空原クンよ。てめェの固有魔法について話してもらおうか。」
「ユニーク……まじっく……ですか?」
(なんだそれ……?)
操は本当に知らなかった。
「あァ?てめェ固有も知らねェの……か……、
いや待て。そうか。」
一瞬顔をしかめて思案する西寺。
「そうか、てめェ装備は多少マシだが、
トリニスタ対応系の会社所属じゃねェのかよ。
マジパンピーじゃねェか。」
「あっ、そうです。山本警備会社の……、」
「いや、会社名とかはどうでもいい。
とりあえず時間はたっぷりあるから説明してやる。
座れ。」
「あっ、はい。」
……遮られてしまった。
「漢字で『固有魔法』、読みは『ユニークマジック』だ。
オレたちの業界じゃそう呼んでんだ。」
「業界用語……なんですね。」
「あァそうだ。トリニスタ対応系の会社だと常識に当たる。
なんでか分かるか?」
「全然分かんないです。」
沈黙。
「……おう、素直なのは良い事だ。
嘘を吐かねェのはプライド高ェ大人はできねェからな。」
操の中に考えが1つ浮かぶ。
(この人、悪い人じゃないのか……?)
「まァ、簡単に言うと弱ェ固有だと、
この業界はすぐ死ぬからだ。」
喋る口調と閉じ込められている事を除けば、
今の所は悪い人じゃなさそうだと操は感じた。
(いや、人攫ってる時点で悪い人ではあるか……。)
もっともだった。
そんな下らない操の一瞬の思考の後、
西寺は話を続けていた。
「ンで、まァ六元素魔法とは全く関係なかったりする、
つまり六元素以外の魔法は固有魔法の可能性が高ェ。」
「光とか闇とか時とかを除きゃァだが……。
まァ……例外の話をしてもキリがねェ。」
「てめェの糸はそれに該当しそうなんだが……、
思い当たる節は?
名前付けてたりするか?」
そう西寺に告げられて初めて気付く自分の魔法。
確かに、言われてみれば今まで出会った人間の中に、
『糸を飛ばす魔法』
『誘導棒を固くする魔法』を持つ人間は居なかった。
……いや後者はまぁ居ないだろう……。
それはそれとして、
つまり自分の2つの能力は固有魔法に当たるだろう……が。
(これを本当に伝えていいのだろうか?)
確かに西寺は自分の能力について話していた。
それは間違いない。
状況的にも性格的にも、
そして能力の強さにも自信があるのだろう。
だからこそこうやって話している。容易に想像がついた。
落ち着けている今の状況だからこそ整理が付いているが。
(もしもここで俺が、固有魔法を伝えたらどうなる?)
そもそも、捕まっている状態で。
尋問的に話をされている状況で。
今、自分が何処にいるかも分からないのに。
ここで話していいのか?
「……どうやら、思い当たる節はあったみてェだが。
馬鹿ではなかったようだなァ。えェ?」
西寺がニヤリと笑う。
「いい、言いたくないならそれで構わねェ。
オレサマの能力は心の覗きとかはできねェし、ガラじゃねェからよ。」
「だが間東解斗は違う。」
突然、西寺が名前を言い始める。
「もしかして先ほどのメガネの……。」
「そうだ、間東解斗。オレサマとは違ェ。
心の覗き見もするし、
アイツの方が数段やべェから覚悟キメとけや。」
身内の話すらもサラっと出ている。
西寺という人間が嘘の吐けない、
いや、嘘を吐かない人間なのだろう。
かと言って、
情報も大事な部分を隠して喋っているのは間違いない。
海斗の固有を話さない辺りは常識の範疇なのだろうか。
「さァて、手前ばっかが喋ってても仕方がねェし、
時間はあるとは言ったが無限って訳じゃねェ。」
「3つだ。3つまで質問に答えてやる。」
「ちゃァんとお頭を捻るんだぜ。
優しいオレサマが答えられる範囲で答えてやらァ。空原クン。」
衛は静かに操の言葉を待つ。




