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第19話:女子と買い物




 (みさお)は街を歩いていた。

 

 


 あの夜、本部に戻り我妻(あがつま)をベッドに寝かせて。

 (あかね)にこっぴどく叱られた後、

 達也(たつや)が言っていた通り操は謹慎を言い渡された。


 同時に(しずく)も無理のし過ぎ、

 黒鉄(くろがね)は目を離したことも大きく怒られていた。


 その後、彼女が言うには。


「操っち、雫ちゃん。

 君たち戦闘は優れてるけど欠けてるモノがある!

 雫ちゃんも暫く仕事ないからね!」


 なので、欠けているモノを探してこいとの事らしい。


「で……、なんで私が駆り出される事になんのよ……。」


 天国御来(あまくにみらい)が今回の保護者枠とのこと。


 というのも、街を練り歩いてこいという。

 大雑把な言葉に押されて三人は東京の渋谷に来ていた。

 

「いや、ホントすいません天国(あまくに)さん……。」


「はぁ……まぁいいわよ。

 とりあえず今日のアンタと雫は荷物持ちね。」


 御来(みらい)は溜め息を付きながらも、

 本気で嫌がってるようではないようだ。

 山手線を降りて、渋谷駅に到着する。

 

 

 昼でも渋谷は相変わらず人通りが多く、

 魔法が定着した世界とは到底思えない景色が流れている。

 

「とりあえず、私の買い物に付き合ってもらうから。」

 雫は頷いて、とことこと御来に付いていく。


(あれ……?)


 周りを見渡す。


 いつ以来だろうか、渋谷に来たのは。

 仕事に追われていたのもあり、

 プライベートでわざわざ渋谷に来ることもなかった。


(この辺、こんな感じだったっけな。)

 

 少し考え方が変わったからか、今は余裕があるからか。

 周りを見る視点自体、少し変わったような気がする。

 

「何よ、何してんのよ。置いていくわよ。」

 

 御来にそう言われ、慌てて小走りで歩き始める。


 実際の所、余裕が出ているのは御来のおかげである。

 我妻はまだ目を覚ましていない。


 御来が「脈はある。

 目を覚ました時に辛気臭い面見たらまた倒れるわ。」と。


 そう言ってくれた事もあり、今は気にしない事とした。


 完全に気にならないと言えば嘘になるが、

 それでも心の中の負担は少しだけ軽くなった。


「御来さん、今日は何処へ行くんですか?」

 雫が静かに聞く。


「えっとね、魔力回復剤用の乾燥薬草と……。

 少し店を見て回ろうかなって。」


「……そんなお店があるんだ。」


「雫、あんたもちょっとは外に目を向けなさい。

 仕事だけが全てじゃないのよ。」


(耳が痛いなぁ……。)


 この前まで面白い事を探していた人間だった癖に、

 自分から探していた訳では無かった事に気付いたのは今。

 周りが灰色だったのは、

 自分が眼を向けていなかっただけなのかもしれない。

 

 御来が入った店は意外な店だった。


「え、驚安の殿堂(ドンキホーテ)で買い物ですか!?」

 

 あまりの驚きに操は声を出してしまう。

 

「何よ……。……まぁ。

 今回はどちらかというと……。なんでもないわ。」


 何か言いたげだったが、彼女は口を紡ぐ。


 店内は騒がしいテーマソングと、

 あちこちで聞こえるセールの音声。

 人々の喧噪でごった返している。


《マジックカレー!お肉も野菜も魔法で調理しています!》


「……なんだこれ、健康に悪そうだな……。」


 操がボソッと呟く。


「あぁ、それね。実際あんまり良くないと思うわ。

 別に問題も科学の観点でも問題はないんだけれど、

 他人の魔力を身体に入れるのは……ね。」

 御来が解説してくれる。


(俗世に疎そうな人だと思っていたが、

 しっかりと外にも目を向けているのか。)


「何か被害が出たりしたの……?」

 雫が聞いてくる。少し興味があるようだ。


「んー。食中毒になったというレビューとかはあるみたい。

 あと不味いらしいわ。」


「……そうなんだ。」

 心なしか雫が残念そうにしているようにも見えた。


「やっぱ、ネームバリューって奴ですかね。」

 現代というのはそういうものだろうと操は思っていた。


「ええ、まさにそうだと思うわ。」

 治療室の彼女と違って、

 御来は凄く柔らかい雰囲気で話してくれている。

 雫も、戦闘中と違って色々な事に興味を示している。


 この二人みたいに自分も、何か違う所があるのだろうか。



魔導扇風機(エアマジックファン)!省スペースで高風力!》


 おお、これは悪くなさそうだ。

「魔導扇風機なのにコンセントなんですね。」

「電気を魔力に変換する技術が使われているらしいわ。」


(電気を放つ魔法があるのに……わざわざ……。)


「なんというか……本末転倒というか……。」

「まぁ、言いたい事は分からなくもないけど。

 でも、これでも従来品より安全で省エネみたいね。」


(確かに、プラスチックが回るよりは危なくないな。)


 まだまだウィンドウショッピングは続く。


魔力測定器(マジックスカウター)!君の魔力はどれくらいだ!?》


(握力図るみたいなコトか……?)

 

炎魔(フレム)ライター!炎元素が苦手でも魔力を込めるだけ!》

 

(あぁ……そうか。

 炎元素が全く使えない人も居るもんな。)

 

《ウィンド・ライト!空中に浮いたまま光を保ちます!》


(お……!)


 操はこの商品に目を引かれた。

 このライトは、『ザ・魔法世界』という感じがしていい。

 アクリル板のデジタル時計で文字が浮いてるのを

 『ザ・科学』と感じるのと同じだ。……伝わるだろうか。


「それが欲しいの……?」


 雫がのぞき込んでくる。


「あ、えっと……。」

 

 距離が近い。

 今まで戦闘ばかりで意識出来ていなかったが、

 雫の顔は可愛いに相当する。


「あっ、いやさ。興味があって。

 結構好きな感じで。だったからさ。」

 可愛さにドキっとして、

 ちょっとしどろもどろになってしまう。


(あー!彼女いない歴、無限の!俺は!弱い!)

 つい顔を背ける。


「買ってあげようか?」

 雫が聞いてくる。


 それを聞いて冷静になる操。

「いや、流石に自分で買うよ。

 めっちゃお金に困ってるわけじゃないからね。」

 少し慌てながらも、操はウィンドライトを持つ。


「でも、ありがとうございます。気持ちは頂きます。」

 そしてちゃんと頭を下げる。


「いえいえ。」

 雫も頭を下げる。


(……この子達は……。)


「何やってんのよ……。」




 御来は呆れて、何も言えなくなっていた。

 

 

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