第18話:導く光と輝く炎
達也は疲弊していた。
不快な鳴き声が無くなる場所まで逃げ切った頃。
残った隊員は達也と副隊長含め7人。
15人犠牲となった。
しかも。
(ルートを外れちまった。副隊長は動けねぇ。)
「達也隊長……。」
木によりかかっている副隊長が口を開く。
「喋んな、一時的に止血しただけでお前の足は、
もうねぇんだ。体力残せよ。」
「達也隊長……ここはルートを外れていますよね……。」
「……あぁ。」
静かに返事をする。
「なんとか……なるかもしれません……。」
「……なんだと?」
達也が聞き返す。
この状況を何とかできるようなこと、あるわけがない。
出血し過ぎ、疲労感で世迷言を言っているのかと思った。
その瞬間。
「『迷うな、さすれば道を照らさん』」
副隊長は固有魔法を発動していた。
「お前、固有は使えねぇって聞いてたぞ……。」
そう達也が言うと、無理に副隊長は笑顔を作る。
「戦闘向きの固有は……。ですが……これは導く光……です。」
血の混じる咳をする。
無理もない、怪我をして固有魔法を行使している。
肉体への疲労は相当なモノだろう。
「皆さん……を……基地まで……お送りします。」
歓喜安堵の声が聞こえる。達也も安堵していた。
「じゃあお前を抱きかかえて……。」
「でき……ません。」
「は?」
達也は硬直する。
「このスキルは……、私が光に意識を集中させ移動させる。
いわば幽体離脱のようなものです。」
「だったら!」
縋るような思いで彼を抱きかかえようとする達也。
「私が動いた時点……で、
光は消えてしまう……でしょう……。」
唇を強く噛む。
「……、すぐに助けを……。」
副隊長は、
絶え絶えの息を整えて達也の眼をまっすくと見つめる。
「隊長、私には分かるんです。1時間も持たずに私は……。」
さっきのような苦しい喋り方ではない。
「そんな事言うな。」
「隊長こそ目を覚ましてください。」
副隊長は強く声を張り上げる。
「貴方が生きなければ、茜さんが悲しみます。
そして、あなたはフロンテラにとって必要な人だ。」
「だから、生きてください。死んだ皆の、私の分まで。」
副隊長はもう光に意識が吸い込まれているのか、
眼の焦点は合っていない。
それでも腕を伸ばして達也の服を掴んでいる。
「……すまねぇ。」
達也は苦しい思いを胸に抱えてその手を解く。
そして光に向かって歩き始める。
1時間足らずだったが光は消える事が無く。
達也を含めた、部隊の6名は無事に帰投し、
光は程なく消えていった。
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「まぁ、そんな感じのことがな……。」
話を聞いている間にかなり時間が経っていた。
操も雫も下を向いたまま、顔を上げる事が出来ない。
今回、我妻が怪我をするに起因した操は特にだ。
「お前らに聞かせた理由はな、
暗い気持ちを持って欲しいからじゃねぇんだよ。」
達也はそう告げる。
「俺がやってしまったこと、
これを反面教師にして欲しいからだ。」
達也は顔を下げなかった。
「雫、空原。そして我妻もだが、お前らはまだ新人だ。
フロンテラに居る意味ってのを分かってほしい。」
彼が苛立っているのは、厳しい目線を向けるのは。
「特に空原。お前は姉貴に謹慎食らうだろうから、
その後身の振り方をどうするかちゃんと決めろ。」
「……はい。」
操はただただ、返事をするしかなかった。
今は考えがまとまらない。整理がつかないのだ。
そんな話に割って入るように小屋の扉が開く。
「終わったわよ。」
御来はそう呟き、マスクを外す。
少しだけ顔色が悪いように見えたのは気のせいだろうか。
黒鉄が御来へと声をかける。
「御来ちゃん、お疲れ様。陽ちゃんはどう?」
「無事よ。毒は私の固有がなんとかしたから。」
操はそれを聞いて安堵で胸を撫でおろす。
「そう……お腹の傷は?」
「縫おうかと思ったんだけど……。彼の固有、もしかしたらとんでもないかもしれないわね。」
違和感を覚える会話。なぜ、固有の話になっているのだろう。
「『羽搏ける不死鳥』。名前を付けると魔法が宿るのかしらね……。」
そう御来が呟く。
そして彼女はこう続けた。
「炎が損傷した肉体を直していたわ。
私は毒と脱水に気を付けただけ。」
我妻の固有魔法は、死をも乗り越えた。




