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第16話:未知と開拓



 (みさお)は外へ出てゆっくりと扉を閉める。

 



 外は周りを警戒しながら椅子に座っている黒鉄(くろがね)が居た。


「黒鉄さん、俺……。」

「思ってることはなんとなく分かるわ。」


 黒鉄は話を遮る。

 操は言葉を待つ。


「固有魔法とか、モンスターとか。

 触れていなかったものに触れたんだもの。

 元は空想上。

 だからこそアタシ達は未知を知らなければいけないの。」


「未知を知る……ですか。」


 黒鉄は頷く。


「そうよ。今日居たセントスピリットは、

 アタシ達が名前を付けたもの。

 元は何でもない虫が魔力を持って生まれたのよ。」


「元々は未知であった、ってことですよね。」


「そう、フロンテラの名前の由来の1つは、

 『フロンティア』から来ているの。意味知ってる?」


「新天地……とかですか?」

 (ゲームの知識ではそんな感じだったような……。)


「そうね、その通りよ。

 アタシ達は知らなければいけないのよ。

 未知を既知に変え、人類が生き残れるように。」


 黒鉄が煙草(たばこ)に火をつける。


「操ちゃんはタバコ吸うかしら?

 ちょっと強いけれど。1本要る?」


「あ、はい。頂きます。」

 操は貰った煙草に指先に魔力を集め、火をつける。


 沈黙、樹海の中の鳥の声や虫の声が響く。

 少しだけオレンジ掛かった光が木から漏れている。


 (夕方……か。)


 春先の日の沈みは少しだけ早い。

 戦闘から長い時間経った訳ではないが、

 時の流れが遅く感じる。

 

 黒鉄は煙草の煙を吐き出すと、話を続けてくれた。


「アタシ達が少数精鋭になったのは最近の事なの。」

「それは何故……?」


「あまりにも死人が多すぎたからよ。

 油断、驕り、実践経験が足りない。

 色々理由はあるけれど。

 一番は未知に命を懸けない子達が多かったわね。」


「……。」


「操ちゃん、(ひろ)ちゃんもそうだけど。

 改めて命を懸けているという自覚をもって。

 今までの仕事と一緒と思っちゃだめよ。」


「……今回の事で、痛感しました。」

 (うつむ)く操。


「そうね……。……安心して、陽ちゃんは大丈夫。

 (しずく)ちゃんが居て助かったわ。」


「……。」

 色々な感情が混ざり、操は声も出せない。


「そんな湿っぽい顔しないの。

 茜ちゃんに怒られる覚悟でもしてなさい。

 一度怒ると怖いわよ~?」


「……はい。」

 なんとか操は元気を作って見せる。

 

 その時だった。



「グアアアアアアウギッ!ウギィイイ!」



 下品な鳴き声と共に草むらから2mくらいの猿が現れる。


「黒鉄さんッ!」


 操は憂いを振り切り、戦闘モードへ切り替える。

 黒鉄は既に反応して立ち上がっていた。

 煙草を吸ったまま、猿を見つめている。


「これは……初めて見る個体ね。操ちゃん、離れないで。」

 操はすぐに黒鉄のそばへと近寄る。


「アタシたちは、防衛に回らなきゃいけないわ。

 陽ちゃんと雫ちゃんを守らないと、分かってるわね?」


「分かっています。」


 誘導棒を握りしめる。


 すると誘導棒が2つに割れ、形が弓へと変わる。

 その際に何本かの羽根つき木の棒も飛び出してきた。

 操はそれをキャッチする。


「操ちゃん、それは?」


「一ノ瀬さんに頼んでおいたんです。

 遠近の両方で戦えるようにしたくて。」


 そう言うと操は弓に魔力の糸を弦として張る。


「どこまでの知能があるか分かりません。

 黒鉄さんは弾を温存して置いてください。」

 

 黒鉄は頷く。


「ロック・アロー……。」

 手元に用意していた木の棒の先端に、

 岩の矢じりが形成されていく。


(同じ(わだち)は踏まない……!)

 

「ウギイイッ!」


 猿は素早く駆けだして来る。

 その後ろの茂みも揺れるのが見えた。


(複数体、居るな。)


 黒鉄はこれに気付いているだろうか。

(気にするな。目の前に集中しろ。自分の出来る事を。)


 弓の弦を引いて放つ。

 風を切る音。


「ギッ!?」


 猿はまっすぐ突っ込んできて倒れる。


(知能は低い……いや、これは……。)


「囮かっ!」


 操は茂みの揺れたタイミングで、

 既に近くに糸を張り巡らせていた。


 その糸に掛かってバランスを崩した猿が音を立てる。


「ギギィ!ウギッ!」


 それに動揺したのか、猿たちは強硬手段を取る。

 左右から猿が飛びだす。


「操ちゃん!右はアタシがやるわ!」

「僕は左を!」


 弓を構えて射る。

 猿は左手でその矢を受ける。


(こいつ!自爆覚悟か!)


「ウギギッ!ウギィッ!」


 猿が左手で矢を防ぎ、右手が光らせ始める。


「魔法!?」

 

 巨大な3mくらいのつららが操の頭上に出現する。


「安直だ!舐めるな!はァッ!」


 弓を誘導棒の形に戻して、つららに振り下ろす。


 つららは方向を変え、地面に突き刺さる。

 猿はその事に憤慨しているのか。

 大きな声で威嚇してくる。


「ギィ!ギアアアイ!ギィアアアイ!」


「キィキィギィギィ、うるさいな!知能の低いの猿が!」


「ギイイイイイイイイイイッ!」

 猿はさらに怒り狂う。


「言葉は分かるのかよ……だったら黙って捕まってろ!」


 糸を猿へと伸ばして、巻き付ける。

 猿は右へ左へと野生の機動力を見せつけて避け続ける。

 しかし、怒り狂ってる猿は気付いていなかった。


「悪いな!そっちには!」


 猿に()()()()()()()()()を強く引く。


「お前のつららが残ってるんだよ!猿!」

「ギッ!?」


 糸の巻き付いたつららは、

 ゆっくりと猿を目掛けて倒れてくる。


「最初からこれが狙いだよ!ストーン・ジェイル!」


 岩が猿の逃げ道を塞ぐ。


「ギギッ!ギギギッ!」


 つららは猿へと倒れ込み、そのまま猿は潰された。

 息絶えたのだろう。つららはそのまま魔力の残滓になる。


「黒鉄さん、こっちは大丈夫です!」

 そう言いながら猿の死体をちゃんと確認する。

 茂みを駆ける音も鳴き声、糸にも反応はない。


「操ちゃん、見てたわよ。

 アタシの出番も無くて良かったわ。」


「なんとかなりました……。」


「冷静に戦えるっていうのはとても大事なコトよ。」

 

 意図せぬ来訪者であったが、操達は撃退に成功した。

 その時だった。


「おーい!林檎(りんご)!何処だ!」


 遠くで声がする。


「この声は、達也(たつや)さん?」


「そうみたいね。こっちよ!達也ちゃん!」


 狼の毛皮を被ったような見た目をしている達也と、

 その肩に座っている御来(みらい)がこちらへ向かってきていた。


「全速力で来たから疲れちまったぜ……。

 おい、空原(くばら)。水くれ。」

「はい、わかりまし……。」


「駄目よ。」


 肩から降りた御来が制止する。


「んでだよ!こちとら疲れてんだよ!少しくらい……。」


「彼の治療に使うわ。悪いけど我慢して頂戴。」

 御来はそう言うと鞄を持ったまま、すぐに小屋へと入る。


「良いって言うまで誰も入ってこないで。分かった?」

 彼女は扉を閉める前にそう残した。

 全員が頷く。達也は少し嫌そうな顔をしていたが。


「雫、もう大丈夫よ。外に出て休んでなさい。」

「はい、御来さん……。ありがとうございます。」

 肩で息をする雫。


「感謝するのはコッチ。

 ……魔力の使いすぎね、これを飲んでおきなさい。」


 御来はエナジードリンクの缶のようなものを雫に渡す。


「空原と林檎は平気そうね。それじゃ見張り宜しく。」


「わかりました。天国(あまくに)さん。」


 操がそういうと、返事の代わりに扉が閉まる。





 操達は、しばらくの時間を待つこととなる。



 

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