表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

第14話:実践とセントスピリット




 (みさお)達は露払いを終えて、黒鉄(くろがね)から話を聞いていた。




「富士山1合目であり、世界樹の1層目。

 この場所について改めて、説明していくわね。」


 黒鉄が話を進めていく。

 

 ここは1合目と呼ばれる場所。

 富士山自体には様々な登山ルートが存在していたが、

 世界樹が根を張り富士山を覆いつくしたことにより、

 ほとんどが消滅。


 『新五合目』や『五合目』と言った通常の登山ルートは、

 張った根のせいで人が登るには険しすぎる絶壁が増えた。

 その為、富士山への入山は禁止され、静けさだけが残る。


 黒鉄が話す内容を簡単に纏めるとこうだ。


 世界樹は根の上を通って富士山へと登るのではなく、

 あくまで根が張っている中を通って、

 世界樹を登らなければならない。


 その関係で富士の樹海と呼ばれる根の中に入る前、

 ここが便宜上の1合目もとい、1層目と呼ばれている。


 空気中の魔力がとても多く、モンスターが沢山居る。

 そのモンスターも魔力の量で強さがピンキリらしい。

 

 そのことを国は結界を張って対応。

 結界とは言うものの魔力ではなく機械に頼り、

 レーダーや監視カメラを通して、

 モンスターの探知から迎撃を行っている。

 時には、依頼を出すこともあるそうだが……。


 だからこそ、不可侵領域(立ち入り禁止)として国が定めている。

 目立ちたがりの配信者等が来ても即日対応されるとか。


「アタシ達フロンテラは世界樹の開拓と、

 ヴィスターやモンスター退治がメインのお仕事よ。」

 黒鉄がそう告げる。

 

 ここに居る事が許されているのは、

 フロンテラが許されている事の証明になるのだが……。

 

「なんで結界は、

 小南(こみなみ)に反応しなかったのでしょうか……。」

 (しずく)が小さく呟く。


「そうねぇ……。

 アタシが思うのはVSCが保有する固有魔法(ユニークマジック)か……。

 国がモンスター討伐をVSCに依頼してるのかも……。」


「今は憶測でしかモノが言えないわ。

 とりあえず今は世界樹に集中するわよ。」


 黒鉄が分からない事であれば、

 自分達に分からないのは仕方ないと操は飲み込む。


「それじゃ、行きましょうか。世界樹探索、1合目へ。」

 操達は頷いて、歩みを始めた。





 ――――――――――――――――――――




 1時間くらい歩いただろうか。

 富士の樹海……と聞けばあまりいい噂を聞かない場所だ。


 登山道というよりは獣道。

 モンスターが出ると言われた割には静かなもので。


「ここ、本当にモンスターでるんスか?

 どちらかというとお化けの方が出そうっすよ?」

 春先の昼間の樹海。木々が日光を遮り暗さすら感じる。

 その薄暗い中、我妻(あがつま)は呟いた。


「お化けが出るならそっちのほうがまだ可愛いわよ。

 アタシはここのモンスターが嫌いで嫌いで……。」

 

「お化けなんて居ない、モンスターに警戒しないと。」

 雫は静かに話していた。


 (お化けの方が嫌だなぁ……。)

 操はそう思っていたがすぐに撤回することとなる。



 カサカサ……ザザッ……と茂みを揺らす音が聞こえる。

 その後カチカチカチという小刻みな音も聞こえる。


「あぁ……我妻ちゃん……余計な事言うから……。

 ちゃんと気持ち悪いモンスターが来ちゃったわよ……。」

 


「ギィイイエェェエエ!」



 目の前に現れたのは、3m強の節足動物。

 何本かも分からない脚がカタカタとなり、

 口をカチカチと鳴らす。

 


 ……分かりやすく言おう。


「ムカデじゃねぇかァアアアァ!マジで気持ち悪い!」

 大声を出しながら後ずさりするのは操。


 実は操は大の虫嫌いなのであった。

 雫は反応が薄く、

 我妻はビックリして動けなくなっている。

 

 黒鉄が大声を出して、指揮を執る。

「皆!ちゃんと動かないと死ぬわよ!

 セントスピリットって言うモンスター!」

 その言葉にハッとしたのは我妻。


 雫はもともと虫耐性があったようで、

 余裕をもって移動を始める。

 

 半狂乱の操はというと。

「マジで虫は無理、マジで虫は無理、マジで虫は!無理!」

 

 魔力で巨大な岩を生成して、

 セントスピリットを押しつぶそうとする。


「ダメよ!操ちゃん!そんなことしたら!」

 

 

 黒鉄の静止の声が空しく響く。

 セントスピリットに大きな岩が降り、潰される……。

 そして動かなく……ならなかった。

 

 大きく暴れ潰れた部分から身体を分裂させ、

 2体へと増えた。


 自分のしたことにハッとなり、操は辺りを見渡す。


(しまった、感情のままに動き過ぎた……!)

 

 パニックから復帰までに時間が掛かったせいで、

 1匹のセントスピリットを見失ってしまう。


「やばい……、やばい、やばい!」

 慌てて誘導棒を硬化させて、

 糸をセントスピリットへ向けて放つ。


 噛みついてくる顎を間一髪で誘導棒で抑え、

 糸を何とか絡ませてセントスピリットの動きを封じた。


「ハアアアッ!『不死鳥(フェニックス)』ッ!大丈夫っすか!操さん!」

 翼を生やして、

 凄い速度で隣で駆けつけてくれた我妻に安心感を抱く操。

 

「セントスピリットは死ぬ前に食らったダメージを、

 分裂に変換してくるの!」


 もう一匹のセントスピリットは、

 黒鉄と雫の方に向かっていた。


「だからちゃんと即死させないと駄目なのよ。

 どこかに核があるはずだから探しなさい!」


 セントスピリットの突進を二人は同じ方向へ躱す。

 操達が見えない位置に分断されてしまった。


(これじゃ、あの子(操ちゃん)達の方に弾が撃てない……!)

 

 しかし、黒鉄は落ち着いている。

 目の前のセントスピリットに対して6発。

 撃ち込まれた弾は頭から胴へ1つずつ吸い込まれていく。


「ギッ!」

 セントスピリットが怯んで分裂を始めようとする。


「させない……ッ!『時迷い(ストレイ)』っ。」

 雫が走り込んで時を止める。


「ナイスよ、雫ちゃん。」

 弾を込めなおし、残りの胴体へフォーカスし撃ち込む。

 雫の周りで弾はスローになり、空中で完全に静止した。


「いいわよ!」

 その一言で雫は下がり、能力は解除される。


 体の至る所に弾を撃ちこまれたセントスピリット。

 断末魔と共に動きを止めた。

 

 

 ――――――――――――――――――――――


 

 黒鉄がセントスピリット1匹を相手している間に、

 操達はもう一匹を相手していた。


 糸で拘束している個体の核を確実に打ち込むために、

 念入りに準備する。

 我妻が燃える翼と共に歩いて近付いていく。


 

「全部燃やすってのは、どうっスか?」



「ギイイイイイッ!」



 くねくねしながら叫び声をあげるセントスピリット。

 操の本当に嫌いなビジュアルをしていて、

 見ているのも辛い。

 

「気持ちワル……、あぁいや。

 そこまでしなくてもいいんじゃないかな?」

 少し目を背けながら、会話を続ける操。

 

「操さん、虫ダメなんすね……。

 じゃあ俺が探して潰すっスよ。どっか見てて下さいス。」


「助かるよ……ありがとう。」


 

 そうして操が横を向くと、

 『グシャリ』という気持ち悪い音が聞こえる。




「終わった?」

 返答は無い。


 


 ……数秒。


 


 

 魔力の糸の感覚的に、

 セントスピリットが未だ縛られているのを感じる操。


 ……何か変だ。



「操ちゃん!」

 向いている方角から銃を構えた黒鉄さんが走ってくる。

 二人と思ったより距離が離れてしまっていたらしい。


()()()()()()


 刹那、急いで頭を下げた位置に、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()



 どうして?

 何故?

 確かに魔力の糸は縛っている。

 操の理解は追いつかない。


3()()()よ!」




 後ろを振り返ると。


 縛られているセントスピリット。

 縛られていないセントスピリット。


 そして。


 

 

 操は叫ぶ。




 「我妻君っ!」



 

 我妻はお腹から血を出して、倒れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ