第13話:訓練の成果と宣戦布告
操達は訓練の成果を発揮する。
(山本社長が言っていたこと……イメージ。)
社長は訓練中に魔法についてを改めて教えてくれてた。
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「魔法というのはすべてイメージが大事なんだよ〜。」
訓練で息を荒げている三人に対して話しかける山本。
「イメージ……ですか?」
雫が聞き返す。
「雫ちゃんの固有は無条件に周りを止めてしまう。
だからイメージを作る必要がないよね。
そのせいで固有に頼りがちになっちゃうんだよね〜。」
それを聞いて雫は頷く。
「一方空原くんはイメージすること自体得意だけれど、
それに固執して生成の素のイメージが足りていない。」
山本は話を続ける。
「例えば……。」
山本は空中に真っすぐ手をかざすと、岩を作ってみせた。
空原は瓦礫や土から岩を作ることは可能だったが、
素材なければできないと思い込んでいた。
「そんなことが……。」
「出来るんだよね~。そ・も・そ・も!
魔力という未知のリソースを使っているのに、
我々の既知で測ってしまうのがいけないんだよ〜。
だからこういうことが起きるんだよね〜。」
まさに目から鱗だった。
(考え方1つでここまで魔法の使い方に差が付くのか……。)
「社長!俺はどうなんスか!」
我妻が食い気味で聞いてくる。
「我妻くんも雫ちゃんタイプの魔法の使い方をしてるね~。
翼からの炎で炎元素を出力してる感じがするよ~。」
「……うす!多分そうっス!」
(本当に分かっているのだろうか……。)
操は心配になった。
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時は戻り。
「お手並み拝見といきましょうか。
三人とも、危なかったら手助けしてあげるから。」
黒鉄はそういうと1歩後ろへと引く。
まずは小手調べということだろう。
黒いもやから形作られた魚は、
表現するならチョウチンアンコウ……の、
口から大きな眼が出てきているような見た目だった。
そんな見た目をしたヴィスターが7体近く居る。
「……趣味が悪いね。」
あの無口な雫でさえ呟いてしまうくらいの気持ち悪さ。
分かる人なら分かる。つまりは、
『SANチェック 0/1D3』と言ったところか。
魚型のヴィスターは迷わずこちらに突進してくる。
「まずは、俺が!『変幻する鋼魔』!」
糸を飛ばして木に絡ませながら、
突進してくるヴィスターの目の前に設置する。
(先端が木に巻き付いたところで……。)
「捕まえ……たッ!」
突如として糸が軌道を変え、魚の身体に巻き付く。
(以前に比べて糸の繊細さが増している……。)
黒鉄から見ても大きな成長を感じていた。
「1点に簀巻き……からのッ!」
「……『時迷い』。」
雫が小さく呟くと、操が集めた魚へと歩いていく。
魚達は時が止まったように動かない。
「『不死鳥』!」
一瞬だけ炎が煌めく。
「まるで漁業っスね!」
空に飛び上がった我妻の背中に炎の翼は見えない。
上昇の推進力を得るためにだけに翼を使って、
我妻は落下を始める。
「ロック・スピア!」
操が空中の我妻に合わせて槍を生成し、
それを我妻が受け取る。
「ハァアアアッ!プロミネンス・ブレイク!」
岩の槍は炎に包まれ赤熱化しながら、
ヴィスターが集まる一点を穿つ。
槍が手を離れる瞬間を確認した雫は、
固有魔法『時迷い』を解除し、
後ろへと大きく下がる。
ヴィスターが動ける頃には炎の魔力が降り注いでいた。
派手な爆発音と共に、
「……っとと、どんなもんスか!」
翼を一瞬だけ出して浮力を得て我妻が戻ってくる。
「……派手だね。我妻くんの魔法。」
「そうね、ちょっとだけ羨ましい。」
操と雫の二人は固有の地味さに嘆いていた。
黒鉄が拍手しながらこちらに歩いてくる。
「うーん、良い連携だわ~。
魔力の出力の仕方もだいぶ上手になってるみたいだし、
85点ってところかしら?」
「85点……?あとの15点は?」
「取りこぼしがあることかしら。」
操はハッとして後ろを振り向く。
魚のヴィスターが1匹ボロボロになりながら、
こちらに向かって黒い水の弾を吐きつけてきていた。
「しまっ……!」
雫も我妻も気を取られていたので固有が間に合わない。
そのまま黒い水を浴びる事には……ならなかった。
「シッ。」
黒鉄の一呼吸。
腰のホルスターからリボルバーを取り出し、
黒い水に1発目の弾丸。
2発目をヴィスターへと撃ち込む。
黒い水の正体は不明だったが、
弾丸の当たった瞬間に炎が出現し水を包んで蒸発させた。
そして二発目のヴィスター当たった弾丸は、
雷を放ち一瞬でヴィスターを霧散させた。
黒鉄は周りを見渡し、弾を4発。リロードを始める。
「すっ……げぇ……!」
感動したのは我妻……ではなく、めずらしく操だった。
ゲーム等でリボルバーに憧れがあったのもあるが、
目の前で抜いて弾を撃つまでの動作が、
まるで西部劇さながらだったのだ。
眼をキラキラさせて黒鉄を見つめる。
「黒鉄さん!リボルバー見せてください!」
「操ちゃん、意外な趣味ね。
後で見せてあげる。今は周りをちゃんとみるのよ。」
「はい!」
操はヴィスターの初戦を難なく超えたのだった。
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1合目、遠方。
遠くからその様子を見ていた二人が居た。
小南と北欧である。
「黒鉄、コッチに撃ちやがったですよ!」
「林檎、コッチにも撃ちやがったですよ!」
北欧と小南の順に喋る。
「でもいい宣戦布告になったじゃねーですか!」
「もちろん!向こうもこれで気付いたんじゃねーですか!」
「相手の実力も測れたですし!一旦報告に変えるですよ!」
「ですし!ボスに報告するんですよ!」
小南と北欧はその場を後にした。
フロンテラとVSCとの因縁は続く。




