幕間3:VisterSlayCompanyと役員達
西寺衛はため息を付いた。
「はァ~~~~~~~~~。」
とても大きなため息。
空原に食らった一撃は思ったより重症で、
歩くのがやっとの状態だった。
「あいつ……気付いてやがったのかァ……?」
誘導棒を避けそこねた時、
音を聞き逃しただけでは無かった。
丁度黒の4号を仕舞っていた眼の方から、
誘導棒を操は飛ばしていたのだ。
「ッつ……、マジで借りは返すからなァ……空原操……。」
「あー!身体がボロボロになってるじゃぁーん!」
「あー!魔力の糸に負けたザコじゃぁーん!」
ピエロのような見た目をした女の子が二人、
跳ねまわるように部屋に入ってくる。
「北欧……小南……てめェら殺されてェのか……!」
北欧と呼ばれた方は、水色の道化師の恰好を。
小南と呼ばれた方は、紫色の道化師の恰好をしていた。
どちらもおおよそ、子供にしか見えない見た目だ。
「ううん、せっかく優しくしてあげようとしたのに~!」
「ううん、せっかくいじめてあげようとしたのに~!」
「殺す!今すぐにだァ!」
「わぁ~!西寺が怒った~!」
「わぁ~!衛が怒った~!」
「騒がしいですね……。」
車椅子で入ってくる間東。
「あァ、間東。今回の代償は長引いてるなァ。」
「えぇ、逃げる為とは言え少し能力を使いすぎました。
歩くにはもう少し掛かるでしょう。」
「間東くん大丈夫~?」
「解斗くん弱くない~?」
お互いに似たような事を言う、北欧と小南。
その喋り方は、まるで双子を彷彿とさせる。
「はいはい、そこまでです。」
会議室の奥から低音の声が響く。
「ボス……。」
「おや、ボス。」
『ボス~!』
皆が一応にボスと言った後、ピシャっと沈黙が訪れる。
誰も座っていなかったはずの一番奥の席に、
一人の男が背を向けて座っていた。
「役員会議なのですから、
皆さんもう少し仲良くは出来ないものですか?」
奥に座った人物、ボスがそう言うと。
西寺はそっぽを向き、
北欧と小南はクスクスと笑い、
間東はメガネを拭く。
「改めてVCSの状況を整理してみましょう。小南。」
「はぁ~い!」
これには流石に北欧も大人しくしている。
「まず、黒の4号脱走による情報漏洩が起きました~!」
小南は横目で西寺を見つめている。
「今回の戦犯は西寺衛!黒の4号が逃げたまではよし。
その後空原操と接触、彼に目的を話しちゃいました~!」
「別に問題ではないんじゃないでしょうか?」
間東が口をはさむ。
「は~い、
顔だけインテリのバカさんは黙ってね!大問題だから!」
間東はバツが悪そうに宙を見る。
「操君はそんなにお気に入りでしたか、西寺。」
ボスが西寺に語り掛ける。
「あァ……?いや、そんなんじゃねェけどよ。」
頭を掻く西寺。
「そうですか。
では、彼をどの様に処理するのが正解だと思いますか?」
「……。」
西寺は沈黙した。
(正解……ねェ。)
熟考する。
「……殺せ……ってかァ?」
西寺の出した結論は乱暴。
「悪くない手だと思うよー!
でも西寺も業界じゃ有名だしー!」
北欧が口を挟む。
「おゥ。そうだな。」
素直に返事する西寺。
「殺すとなったらフロンテラも黙っていないよー!
少し直球すぎるかもー!」
北欧の言いたいことの続きを言う小南。
「んじゃァどうする?」
「これはどうだろう。―――――――――――――――。」
ボスと呼ばれた男が代替案を提出する。
「それはァ……。」
「計画が遅くなりませんか?」
西寺と間東が口を挟む。
「珍しく頭が回るね、間東。
だが構わないよ。発芽は、急がなくても問題ない。」
ボスは間東を褒め、計画についての補足も加える。
「あはは!流石ボス!悪い事が上手!」
「あはは!陸澤サマ!それってサイコーにクレイジー!」
北欧と小南は変わらない反応をする。
賛成であることは間違いないだろう。
「で、あればしばらく私は作業に注力させてもらう。
西寺、自分のミスは自分で取り返しなさい。
しばらく代表代理をしなさい。」
「ゲッ……。」
声と顔に出る西寺。
「やーい!これから大変だね~!」
「やーい!これから書類だらけ~!」
「私は応援してますよ、西寺。」
親指を立てる間東。
西寺は間東に中指を立てた。
「他にVCSが置かれている状況についてはあるかな?」
会議は続く。
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会議が終わり、帰路に着く西寺。
外は真夜中、自分の足音だけがコツコツと響く。
「あァ……しばらく外回りはナシかァ……。
自分で撒いた種ではあるけどよォ……。」
西寺のボヤキが止まらない。
「まァ、あいつらのコトだ。
ちょっとやそっとで倒れるわけねェだろうしな。」
「またやり合える時を楽しみにしとくかァ。
ヴィスター相手ばっかはクソ面白くなかったからなァ。」
「いい息抜きだったぜ。……その後始末は頭が痛ェが……。」
「はァ~~~~~~~~~。」
西寺衛はため息を付いた。




