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第9話:目覚めと案内



 (みさお)は再び目を覚ました。



 今度は知らない天井ではなく、二度目の天井。

 身体を起こして周りを見渡す。


 そこはまるで保健室のような、

 病室のような消毒液の匂いが鼻に付く。


 眩暈等も落ち着いており、

 身体の自由もだいぶ効いていた。

 

 ……何故か隣で我妻(あがつま)が横になって唸っていたが、

 見なかったことにしよう。


「何よ、起きたのね。」


 御来(みらい)と自己紹介していた女の子がこちらを見つめている。

 低身長、黒髪ツインテール。

 白衣の中には黒いフリフリの目立つ服。

 分かりやすく言えば、人形のような子供。


「起きたならとっとと出ていきなさい。

 ここは健康な人間が居る所じゃないんだから。」


天国御来(あまくにみらい)……さん。何個か質問してもいいですか?」


 ちゃん……と呼びかけた口を急いでひっこめて、

 呼びなおす。


 ペンを止めて、御来は深くため息を付く。

「……はぁ、いいわよ。今は忙しくないから。

 私の気は短いから手短に、あと敬語はいい。」


 明らかに不機嫌そうな態度を取る御来。

 ただ、答えないという訳ではないらしい。

 

「えっと……じゃあ、天国(あまくに)さん。

 俺の代償が血液というのはなんで分かったんだ?」


 操は当然の疑問をぶつける。


 御来は退屈そうにカルテを見ながら、

 そしてペンをクルクルさせながら口を開く。


「貧血の症状、息切れ・動悸・眩暈。

 運ばれてきた貴方の顔が黄色くなっているところから、

 魔力酔い症状ではなく貧血であることは予想がついた。」

 ペンをピタッと止める。

「そもそも魔力酔い・魔力不足の症状は、

 頭痛・眩暈・吐き気・痺れ。

 貴方の症状と重なっているのは眩暈くらいね。」


 ペンをこちらに向けてくる。

 

「それだけ。分かった?」

 的確だった。


 操は解答に納得して、次の質問へと進む。


「ありがとう……。

 最後の質問という事で……天国さんはお医者様なのか?」

 

 御来はこちらを見なおして、眼を丸くする。


「何よ、それ以外何に見えるのよ……。

 小学生って言ったらブッ殺すわよ。」


「あ、いや、そんなつもりは……。

 純粋な興味ってことにしておいてください……。」


 操は慌てて取り繕う。


(小学生に見えるんだもん……。仕方ないじゃん……。)


 御来はため息を付いて、立ち上がる。

 身長は130くらいに見える。

 

「はい、楽しい楽しいお話タイムは終わり。

 それじゃ出ていって。」


「あ、はい、分かった。」


 促されるまま操はベッドから降りて、

 ゆっくりと扉へ向かう。


「そうそう、あとこれ。血液量を増やす薬、

 鉄剤。これ飲んでれば多少マシだと思うから。」


 ぶっきらぼうに袋を押し付けてくる御来。

 やることはしっかりとこなしているんだなと思う。


「ありがとう、また今度話をさせてくれ。」


 そのまま、扉が閉まり御来が見えなくなる。

 御来は一人つぶやく。


「『()()』……ね。

 できればもう此処には来ないで欲しいのよね。」


 またペンをカルテへと走らせるのだった。



 ――――――――――――――――――――



 扉から出て目に留まったのは、

 椅子に座ってぼーっとしている雫だった。


 固有魔法もそうだが、彼女の周りは如何せん、

 時が止まっているような印象を受ける。


「起きたのね。」


 そういうと、こちらを見ながらゆっくりと立ち上がる。


「あなたは……。」


冷泉 雫(れいせん しずく)、雫でいいよ。」


 そういうと背を向けて、歩き始める。

「来て、茜さんに案内を頼まれてるから。」


 こちらを一瞥すらもせず、早いペースで歩き始める。

「フロンテラって……一体どんな会社なんだ?」


 さっきの御来との会話に引っ張られて、

 敬語を付け忘れてしまう。

 分からない事だらけの操は、

 ただ質問に徹することしかできない。


「対トリニスタ用の会社。」


 歩むペースは変わらずに言葉を続ける。

 敬語に関しては雫はさほど気にしていないようだ。

 

「でも、俺は聞いたことも無かった。」

「それはそう、

 ニュースとかで報道されることもないから。」


 確かに、VSCの名前は何度か耳にすることはあったが、

 フロンテラ自体の話を聞くことは一度もなかった。


「それは一体……?」

「藤林さんが情報を出さないように立ちまわってるって、

 茜さんもあえてそうしてるって言ってた。」


 初耳の名前が飛び出す。

(そのうち会えるだろうし、今聞く話じゃないか。)


 とりあえず、

 藤林さんについては一旦スルーしておくことにした。


「さっき君の居たところが治療室。でここは資料室。

 本とかトリニスタの情報がまとめられてる場所。」


「結構しっかりとした施設なんだな……。」

 関心が止まない。

 そのまま、雫は淡々と説明を続けていく。


「ここは訓練場。」

「ここはコントロールルーム。」

 その後も所長室、会議室、休憩室、事務室、開発室……。

 と、『室』がゲシュタルト崩壊するほど案内された。


(随分と広いな。)


 白い鉄の廊下と繋がってる施設の場所。


 すべてを見て思ったのは、とんでもない広さという事。

 こんなに広い施設が、

 一個人の小さい会社が使えるというのも不思議な話で。


「ちなみに出口は?」


 そう質問を投げると雫はこっちと指を向けて歩き始めた。

 そういって着いた場所は、

 先ほどコントロールルームと呼ばれていた部屋。


「コントロールルームの先に出口がある。」

「随分と変な間取りだな……。」

「理由がある。」


 そう言って雫が扉に手を掛けたその時。


『ぴんぽんぱんぽーん!所長の(あかね)だよ~!

 我妻くんの二度寝が終わったので、

 顔合わせの為にみんな会議室に集まってね~!

 ぱんぽんぴんぽ~ん!』


 施設内アナウンスでも元気な茜の声。

 



 操たちは(きびす)を返し、会議室へ歩いていくのだった。


 

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