第5話
「こ、ここは一体……っ!?」
深夜の公園からどこかの森の中に一瞬で移動したことに栄人が驚いていると上空から突然大きな音が聞こえてきて、彼が上を見上げるとそこには身体の一部が機械の恐竜のような生物が何匹も空を飛んでいた。そしてその生物は……。
「間違いない。『Dragon&Dragoon』のモンスターだ……」
カードゲーム「Dragon&Dragoon」のモンスターの姿は、身体の一部が機械の恐竜やドラゴンで統一されていて、今も空を飛んでいる現実世界では絶対に存在しない身体の一部が機械の恐竜は、ここがモンスターが存在する異世界である何よりの証であった。
「はは……。本当に俺、異世界に来れたんだ……。このカード、凄すぎだろ?」
自分がモンスターのいる異世界に来れたことを実感した栄人は、震える手で自分のカード「泳炎竜の故郷」を持って呆然と呟く。
ゲートを使わず自分の好きな時にモンスターのいる異世界へと行って新たなカードを手に入れることができるカード。それは「ゲートカード」と呼ばれ、都市伝説として伝わっていることを栄人は知っていたが、まさかそれが自分のところに現れるとは夢にも思わなかった。
「これさえあったら俺は……え?」
自分のカードを見ながら一人呟いていた栄人は、周囲から聞こえてきた物音に我に帰る。物音が聞こえてきた方を見ると、近くで一匹のモンスターが森の中を歩いて行く姿が見えて、彼はここが無数のモンスターが存在する危険地帯であることを思い出した。
「このままだったら流石に危ないな。……よし、ここはコイツを呼ぶか」
そう言うと栄人は三枚あるカードで唯一のモンスターカードを取り出しモンスターを召喚する。
「『泳炎竜ヴォルダイブ・ザイラー』召喚!」
栄人がモンスターカードを掲げて効果を発動させた次の瞬間、彼の前に一体の巨大な影が現れた。
それは巨大な二足歩行の恐竜のようなモンスターだった。モンスターの頭部には二本の角が生えており、背中には機械の管のようなものが一列になって何本も生えていて、管と管の間には光を放つ膜のようなものがあって船の帆のように見えた。
「おお……! 本物だ。本物のヴォルダイブ・ザイラーだ……! と言うことは……?」
前世から慣れしたんできた自分の相棒とも言えるカードのモンスターを実際に見れて感動した栄人は、次に自分の姿を確認すると頭部と両腕、両足に鋭い棘がいくつもある全身鎧と潜水服を合わせたようなパワードスーツを装着していた。
栄人が前世で遊んでいた「Dragon&Dragoon」は「|Dragon&Dragoon《竜と竜騎士》」というタイトルの通り、プレイヤーは竜騎士となって自分が召喚したモンスターと一緒に戦うという設定のカードゲームだ。モンスターカードの絵も、モンスターと一緒にパワードスーツを装着してモンスターに騎乗している竜騎士が描かれており、その設定はこの世界でも引き継がれているようであった。
そして今の栄人の、身体中に鋭い棘を生やしたパワードスーツ姿は「泳炎竜ヴォルダイブ・ザイラー」のカードにモンスターと一緒に描かれている竜騎士そのものであった。
「やっぱり、モンスターを召喚したら俺もカードの竜騎士の姿になるのか」
現実世界で竜騎士の姿となって召喚したモンスターに騎乗している人達を見てきた栄人は、自分もモンスターを召喚したら竜騎士の姿になると予想していたのだが、実際に竜騎士に変身した自分の姿を見ると驚きと興奮が抑えられなかった。
「とにかくこれでモンスターが現れても一先ずは大丈夫だな。それじゃあ早速異世界を探検してみますか」
そう言うと栄人は自分が召喚したモンスター、ヴォルダイブ・ザイラーの背中に乗ると異世界の探検に出るのであった。




