第4話
栄人が手に入れた三枚のカード。そのうち一枚はモンスターを召喚するカードで、残り二枚のカードは特殊な効果を発揮するアイテムを呼び出すカードであり、前世から「Dragon&Dragoon」で遊んでいた彼はこの三枚のカードのことをよく知っていた。
特にモンスターを召喚するカード。栄人は前世で「Dragon&Dragoon」をする時、このモンスターのカードを主力にしたデッキを好んで使っていて、正直に言えば転生した今でもこのカードを使うことができるのは嬉しかったのだが……。
「このカード……気に入っているし、攻撃力も強いんだけど、特殊能力がなぁ……」
栄人のカードのモンスターは攻撃力は高い方で「Dragon&Dragoon」はモンスターカードが一枚あれば遊べるカードゲームなのだが、それでもモンスターの特殊能力や他のカードの効果で戦況を有利にしていくのが基本的な戦い方だ。そして当然、栄人のカードのモンスターも特殊能力を持っているのだが、問題はその特殊能力が「自分が持つ他のモンスターのカードを破壊することが発動条件」という点である。
この世界の人間が十歳くらいに手に入れるカードは三枚から五枚。
そこからカードを増やすには「ゲート」と呼ばれる異世界に通じる通路を使ってモンスターが住んでいる異世界へと行き、新しいカードを手に入れなければならない。
しかしゲートは何時何処に現れるのかは完全にランダムな上、現れて一定の時間が経過するとゲートは閉じて消えてしまう。
ゲートを使って異世界に行った人間からカードを購入する方法もあるにはあるのだが、カードが何よりも貴重な物であるこの世界では、前世だったら十円くらいの値段のカードに何十万の値段がついているのが普通で、レアで強力なカードだったら数千万円で取引されることも珍しくはない。
つまりモンスターカードを集めることが困難であるこの世界では、栄人のカードのモンスターは特殊能力を使うことができず戦力も半減しているということだった。ちなみに残りの二枚のカードも、モンスターカードを破壊することが効果の発動条件となっているため、今のままでは使うことができない栄人は落ち込んだ。
「はぁ……。しょうがない。ここはお気に入りのモンスターを召喚できるようになっただけでもヨシと思うことに……ん?」
落ち込む気持ちを切り替えて何とか前向きに考えようとした栄人は、自分の三枚のカードの一枚を見てある違和感を覚えた。そのカードの効果のテキストには、前世で見たそのカードの効果に加えてもう一つの効果が書かれていた。
「何だコレ? ……『異世界、あるいは現実世界に転移する』?」
自分のカードに書かれている、前世で見た同じカードにはなかった効果を読み上げた栄人は最初、その効果の意味を理解できなかった。しかしその数秒後、カードの効果を理解すると栄人は思わず叫びだしそうになり、気がつけばカードの効果を確かめようと家の外に出ていた。
「ここならいいよな……?」
実家のアパートの近くにある公園に来た栄人は周囲を見回して誰もいないことを確認すると、自分のカードを呼び出して効果を発動させる。
「さあ、行くぞ……! アイテムカード『泳炎竜の故郷』を発動! 異世界へと転移する!」
栄人が自分のカードを掲げて効果を発動させた次の瞬間、視界が光に包まれて次に目を開けるとそこは、深夜の公園ではなく何処かの森の中であった。




