第37話
「十輪寺君? あのモンスターについて何か知っているみたいだけど、アレは一体何なの?」
栄人の呟きを聞いたタツミは、自分が召喚したモンスターに乗って彼に近づくと、空から自分達を見下ろしているモンスターについて質問する。
「……『光装竜王スターズ・レッド・エクレクス』。『王』の称号を持つモンスター、その一体ですよ」
「王の称号を持つモンスター?」
自分の質問に答える栄人の言葉の中に聞き覚えのない単語があったタツミが聞き返すと、栄人はそれに頷いて空の上にいるモンスター、スターズ・レッド・エクレクスを見上げながら説明をする。
「俺が使う泳炎竜シリーズや紫宝院先輩が使う紫電竜シリーズと言った、モンスターのシリーズにはそれぞれ頂点に立つモンスターが存在するんです。それが『王』の称号を持つモンスター。……そして今いるアイツは、ヒカルが使っている光装竜シリーズの頂点に立つ光装竜達の王、光装竜王スターズ・レッド・エクレクスなんです」
「光装竜シリーズの、王……?」
タツミに説明する栄人の言葉を聞いたヒカルは、驚いた顔で栄人達を見た後でスターズ・レッド・エクレクスを見上げる。
「それぞれのシリーズの頂点に立つ王のモンスター……そんなの初めて聞いたわ。……じゃあ、十輪寺君は泳炎竜の王のカードを持っていたりするの?」
「………いいえ。持っていませんよ」
タツミがふと気になったことを聞くと、栄人は若干悔しそうに答える。
五年前、初めてカードを自分の中からカードを呼び出せるようになって、異世界の泳炎竜が生息している地域へ転移できる「泳炎竜の故郷」を手に入れた日から栄人は、家の借金返済のためにモンスターカードを集めながら、自分のデッキを完成させようと泳炎竜のモンスターカードも集め続けてきた。しかし結局、栄人は他の泳炎竜のモンスターカードはほとんど集めたが、泳炎竜の王のカードだけは手に入れていない……どころか、そのモンスターを見かけたことすらなかったのである。
(俺は五年間必死で探したのに、それでも『王』のカードが見つからなかったのに、何でヒカルの時は何もしていないのにあっさりと向こうからやって来るんだよ? これが前世で言うところの主人公特典みたいなヤツなのか? 本当に羨ましいなぁ、オイ?)
前世の世界でもこの世界でも、自分は目当ての景品が当たらないのに別の人があっさりと目当ての景品を引き当てると、筋違いと分かっていてもその別の人に嫉妬の感情を持ってしまうものである。
栄人がヒカルに向けて心の中で軽い呪詛を吐いていると、それまで会話に加わらずスターズ・レッド・エクレクスを見上げていたミサキが話しかけてきた。
「それで……何であの光装竜の王様はいきなりやって来たの?」
「……多分だけど、俺達の戦いに気づいて様子を見に来たら自分と同じ種族、ヒカルが乗っているスターズ・レッドに気づいて、光装竜を従えているヒカルがどの程度の実力を持っているか興味を持ったってところじゃないか? 確か光装竜って、基本的に好奇心と仲間意識が強かったはずだから……」
ミサキの質問に栄人は前世の知識を思い出して答える。
ちなみに栄人が使う泳炎竜は仲間意識とかはほとんど無く、同じ泳炎竜が他のモンスターに襲われていても遠くから観察するだけである。これは泳炎竜が倒されると体内の熱エネルギーが暴発するからそれに巻き込まれないためなのだが、この辺りも栄人が泳炎竜の王を見つけられない理由の一つなのかもしれない。
事実、空の上にいるスターズ・レッド・エクレクスはいまだに襲いかかる様子を見せず、スターズ・レッドに乗っているヒカルの方に視線を向けていた。
「どうやら向こうはヒカルが目当てのようだけど……どうするんだ?」
「……もちろん戦う。せっかくレアなモンスターが出て来たんだ。ここで捕まえてみせる」
栄人が聞くとヒカルは、上空のスターズ・レッド・エクレクスの目を見返してそう答えるのであった。




