第36話
「十輪寺君、どうしたの? ボーッとしたりして?」
「え? ……いえ、光装竜が見つからないな、と思って」
栄人が召龍学園で起きる事件、ドラグーン・アカデミーのラストバトルのイベントについて考えているとタツミが話しかけてきて、栄人はとっさに話を逸らそうとする。栄人達が今いる山岳地帯は、彼が光装竜の出現場所だと言って来たのだが、現れたのストロッグ一体だけであった。
「ヒカルとミサキもすまなかったな。ここに光装竜が出現するはずだったんだけどな」
「いや、十輪寺が謝ることじゃないだろ」
「そうだよ。まだ探し始めたばかりなんだし、もうちょっと探してみようよ」
栄人が自分の言葉を信じてついて来てくれたヒカルとミサキに謝罪すると、ヒカルが栄人の言葉に対して首を横に振り、ミサキがここで更にモンスターを探すことを提案する。
「でもそれだったら、早く探した方がいいんじゃない? 帰る時間を考えたら、もうそんなに時間はないはずよ?」
ミサキに向かって言うタツミの言葉に栄人も同意見であった。栄人が周囲を見回すと、周囲には自分達以外の生き物の気配が感じられずにいた。
「確かに……俺と紫宝院先輩との戦い、ヒカルとミサキがストロッグと戦ったせいで、この周りからはモンスターが逃げてしまったみたいだからな。新しいモンスターを探すならもっと奥に……ん?」
『『………!』』
栄人の言葉の途中ですぐに移動できるように、そして何かがあった時にすぐ対応できるようにと召喚したままであった、栄人のヴォルダイブ・ザイラーとヒカルのスターズ・レッドが、同時に首を動かして二体とも同じ方角の空を見上げた。
「ヴォルダイブ・ザイラー?」
「どうしたんだ? スターズ・レッド?」
基本的にカードから召喚されたモンスターは、召喚者の指示がない限り例え自分が殺されることになっても動かないものである。
しかしこの時のヴォルダイブ・ザイラーとスターズレッドは、栄人とヒカルの指示も無しに同じ方角の空を見上げ、二体のモンスターはそれぞれ首を動かさずに目だけを動かして自分達を召喚した栄人とヒカルに視線を送っていた。その姿は、まるで危険が近づいているから早く自分に乗れと言っているような気がして、栄人とヒカルだけでなくミサキとタツミも何か異常事態が起ころうとしているのを感じた。
「……よく分からないけど、モンスターに乗った方が良さそうだな?」
「みたいだな。ミサキと紫宝院先輩も、念の為に自分のモンスターを召喚しといてください」
ヒカルがスターズ・レッドの背中に乗って栄人に言うと、栄人はヒカルに返事をしてヴォルダイブ・ザイラーの背中に乗り、ミサキとタツミにも自分のモンスターを召喚するように言う。
「う、うん」
「分かったわ」
そしてミサキとタツミが栄人の言葉に従って自分達のモンスターを召喚したその時、「それ」は現れた。
異世界の大陸の北方にある山岳地帯、その更に北から強い光を放つ光の球が高速で栄人達の元まで飛んできたかと思うと、光の球は空の上で停止すると輝きを徐々に弱めて消えていき、代わりに一体のモンスターの姿が露わになる。
「……スターズ・レッド?」
光の球の中から現れたモンスターの姿を見てヒカルが呟く。
ヒカルの言う通り、空の上から栄人達を見下ろしているモンスターは、ヒカルが乗っているスターズ・レッドによく似ていた。だが空の上にいるモンスターはスターズ・レッドより身体の大きさが二倍以上大きく、見ただけで身体中に強大なエネルギーが漲っているのが分かった。
「あれは……『光装竜王スターズ・レッド・エクレクス』……!? 『王』のカードのモンスターが自分から現れただって……!?」
この場で唯一、新たに現れたモンスターの正体を知っている栄人は、信じられないといった表情で呟いた。




