第31話
いきなり自分と戦えと言ってきたタツミに栄人はわけが分からないと大声を出す。
「どうして俺と紫宝院先輩が戦わないといけないんですか!? 戦う理由なんてないでしょう?」
「あら、そう? 『強そうな人と戦うのは面白そう』というだけじゃ戦う理由にならないかしら?」
「うぐ……!」
首を傾げながら返事をするタツミに栄人は言葉を詰まらせる。
確かにこの世界の人達はモンスターを使った戦いを楽しんでいて、些細な理由でモンスターを使った理由を行うことが多い。それに前世でもカードショップでカードゲームを楽しんでいると、腕に覚えのあるプレイヤーに対戦を申し込まれることがあるし、携帯電話でするカードゲームなんかだと通信対戦の申し込みに申し込まれが日常茶飯事であった。
「私ってカードが強い人が大好きで、強い人と戦うのはもっと好きなの。だからこの前の十輪寺君と虹城君の戦いは見ていて本当に興奮したわ。あの時は気絶した虹城君を看病するためにすぐにいなくなっちゃったけど、そうじゃなかったらすぐに対戦を申し込みたかったわ」
(……そういえば、ゲームの彼女って戦闘狂みたいな一面があったっけ?)
先日の栄人とヒカルの戦いを思い出したのか、タツミは興奮したように頬を赤くし、そんな彼女を見て栄人はゲームに登場する紫宝院タツミのことを思い出す。
ゲームのドラグーン・アカデミーの中盤で登場する紫宝院タツミが主人公の虹城ヒカルと知り合うきっかけは、カードに強い下級生がいるという噂を聞きつけた彼女が虹城ヒカルに腕試しを申し込むというものであった。そしてその腕試しの戦いで紫宝院タツミは虹城ヒカルに興味を持って知り合いとなるのである。
ゲームの紫宝院タツミは話しかける度に戦いを仕掛けてきて、彼女の好感度を上げる方法は戦いに勝つことだけだった。しかしプレイヤーのゲームの腕前が高かったり、ゲームをクリアしたデータから所有カードを引き継いでいたりすると紫宝院タツミに勝つのはそれ程難しくはなく、そうすると知り合ってすぐに彼女の好感度を最大まで上げてイベントを攻略することができたりして、この事も多くのプレイヤーが紫宝院タツミを攻略対象に選ぶ理由であった。
(でもまさかヒカルとの戦いのせいでタツミの興味が俺に向いてくるだなんて……。これってゲームにはない展開を引き起こした影響なのか?)
本来、十輪寺栄人はゲームの序盤で虹城ヒカルに敗れて、それからは一切ゲームに登場しなくなる序盤の敵キャラにすぎない。それが主人公のヒカルに勝ち、今もこうしてゲームの舞台である召龍学園に居続ける影響が、自分に戦いを挑むタツミなのかと栄人は頭を悩ませる。
「それじゃあ、虹城君達もまだかかりそうだから、私達も戦いましょうか?」
タツミに言われて栄人がヒカルとミサキの方を見ると、ヒカルとミサキはそれぞれモンスターを召喚してストロッグと戦っているが、二人とも苦戦しているようでタツミの言う通り決着がつくまでまだ時間がかかりそうであった。
「……はぁ。分かりましたよ」
「そうこないとね! 私を楽しませてちょうだい、十輪寺君!」
(アレ? 何か忘れている気がするんだけど……気のせいか?)
ここで断ってもタツミは多分別の場所で戦いを申し込んでくるだろうと考えた栄人は、ヒカルの時のようにこれも彼女の実力を測る機会だと考えて頷くと、タツミは嬉しそうな笑みを浮かべて自分のモンスターを召喚した。
……そしてその数秒後、栄人はタツミからの挑戦を受けたことを心の底から後悔することになるのであった。




