第29話
「さ、て、と? いつまでもここにいても仕方がないし、そろそろモンスターを探しに行かない? それで何処から探すつもり?」
タツミはそう言うと両腕を組んでお手並み拝見とばかりに栄人達を見てきた。その様子から何処を探せば良いか等の助言はしてくれないだろうと判断したミサキは栄人とヒカルに話しかける。
「え〜と……? 一体どうすればいいのかな?」
「そうだな……。何処かモンスターが多そうな場所を探すしかないが、ここまで広いとなると……」
「だったら、とりあえず北の方へ行ってみたらどうだ?」
ミサキに聞かれてヒカルが悩みながら答えると、栄人が二人に北に行くことを提案する。
「北? 何か根拠があるのか?」
「……北の山岳地帯にはヒカルが使う光装竜のモンスターが出現するという情報を、以前聞いたことがある」
『『っ!?』』
「へぇ……?」
何故北へ行くのかと聞くヒカルに栄人が答えると、栄人の口から出た情報にヒカルとミサキが驚いた顔となり、タツミが興味深そうに栄人を見る。
「俺が使う光装竜が出現? 何でそれを知っているんだ?」
「……俺は以前から何度も学園のとは違うゲートでこの異世界に来たことがある。その時に色んなモンスターの出現情報を教えてもらったんだ」
ヒカルの質問に答える栄人の言葉は一部嘘である。以前から何度も異世界に行ったというのは事実であるが、モンスターの出現情報を知っているのは前世の知識によるものであった。
栄人は前世でカードゲームの「Dragon&Dragoon」を開発・製造している会社が公開している公式ホームページを何度も見ていた。そのホームページには「Dragon &Dragoon」をより楽しむためのカードのサイドストーリーを紹介するページがあり、そのページには今栄人達がいる異世界の大陸の情報から光装竜の出現地点の情報も記されていた。
「それってもしかして十輪寺家の力ってヤツ? ……お金持ちって凄いんだね?」
「そうだな……」
カードがプロスポーツや軍事に使われているこの世界において異世界の情報、それもモンスターの出現地点の情報とは一攫千金のものであり、強力なモンスターの出現情報ともなればそれこそ国家機密と扱われてもおかしくはない。ミサキは栄人が、そのモンスターの情報を十輪寺家の財力で手に入れたと考え、栄人も誤解されたままの方が都合が良いと考えて特に訂正することはなかった。
「で? どうするんだ?」
「……行こう。俺も新しい光装竜のカードが手に入るのだったら、それを手に入れたい」
「私も北でいいよ」
栄人の言葉にヒカルもミサキも頷き、栄人は二人が自分の提案を受け入れたことに内心で胸を撫で下ろしていた。
(よかった……。これでヒカルのデッキも少しは強化できるか?)
栄人が光装竜の出現地点を教えて北に行くことを勧めたのは、ヒカルのデッキを強化するためであった。
虹城ヒカルはゲームのドラグーン・アカデミーの主人公で、これから起こる事件を解決する中心人物であるが、デッキがたった五枚のカードしかなくて実戦経験もほとんどないなんて不安でしかない。そう思った栄人はいっその事、自分の集めたカードの一部をヒカルに渡そうかとも考えたのだが、先日ミオに大量のカードを渡した栄人は、ユキからこれ以上カードを無闇に他人に渡さないでほしいと強く釘を刺されていた。
ちなみに栄人に釘を刺す時のユキはというと……。
『ええですか、栄人様? 栄人様のカードはご自身を守るための武器であると同時に、いざという時のための資産なんですよ? これからの栄人様とウチの生活の為に、そして豊かな老後の為に、もうウチ以外の誰かに無闇矢鱈とカードを渡したらあきまへんよ?』
……と、よく分からないことを言っていたのだが、その時のユキの笑顔からは凄まじい威圧感を感じられ、栄人はこの時のユキが今まで見た中で一番恐ろしいと思った。
とにかくヒカルにカードを渡してデッキを強化できなくなったのは完全に栄人の自業自得で、その代わりとして栄人は光装竜の情報をヒカルに渡してデッキ強化のサポートをすることにしたのである。
(それにしても全く……。何でカードゲームの世界に転生したのに、デッキ一つ作るのにこんなに苦労しないといけないんだよ?)
栄人は今更な気がするが、心の中でこの世界の理不尽さに愚痴を漏らすのであった。




