第28話
ゲートに触れて視界が光に包まれた栄人達が次に目を開くと、そこはゲートがあった建物の中ではなく広大な草原であった。周囲を見回してみてもビルなどの人が作った建物は一つも見当たらず、代わりに遠く離れた場所や空にモンスターと思われる影がいくつも確認できた。
「ここが異世界……?」
「そうよ。ここで私達はモンスターのカードを手に入れて自分のデッキを強化していくの。それで……」
ミサキがl周りを見回して呟くと、後から異世界にやって来たタツミが彼女の呟きに返事をして、それからタツミは制服のポケットから携帯端末を取り出すと栄人達に見せる。
「これがこの大陸の地図で、私達が今いるのはこの辺りね」
携帯端末の画面には五角形の形をした大陸が表示されており、タツミは大陸の中心を指差した。
「この辺りは見ての通り草原で、東側と西側は密林地帯となっていて、北側は山岳地帯、南側は砂漠地帯となっているわ。地域によって生息しているモンスターが違うから、欲しいモンスターのカードがあるなら、そのモンスターがどの地域に住んでいるか調べる必要があるわね。一部の生徒を除いて異世界実習で異世界にいられる時間は十時間くらいだから、モンスターカードをたくさん集めたかったら、何処を探索するかしっかり計画を立てた方がいいわよ」
「じゅ、十時間ですか!?」
タツミの説明を聞いてミサキが驚いた声を上げるが、タツミは何でもないように答える。
「ええ、そうよ。この異世界と現実世界は時間の流れが違うから、ここで十時間経っても現実世界では三十分くらいしか経っていないの。それでモンスターに乗っても移動にはかなり時間がかかるから、十時間でも時間が足りないくらいよ。制限時間は生徒皆が事前に渡された携帯端末が報せてくれるけど、皆は携帯端末は忘れてないわね?」
タツミが聞くと栄人達三人はそれぞれ携帯端末を取り出して見せ、それを確認したタツミが頷く。
「うん、よろしい。携帯端末は非常事態に助けを呼ぶ発信機でもあるから決して無くさないように。そして制限時間は必ず厳守。よほどの理由がない限り十時間の制限時間を大幅に遅れたりなんかしたら、数回の異世界実習の参加禁止といったペナルティがあるから。そして最後に……」
そこでタツミは言葉を一旦切ると後ろを振り返り、栄人達もタツミが視線が向けた方向を見る。タツミの視線の先には石で作られた広場があり、広場の中央には青白い光の球が宙に浮かんでいた。
「あれが現実世界に帰るためのゲート。あれに触れたら現実世界に帰れるから制限時間になったら、あそこから現実世界に帰ればいいわ。……ここまでで何か質問はあるかしら?」
「いいえ、ないです」
「ありません」
「俺もないですね。……それにしても」
タツミに何か分からないことがないかと聞かれてミサキとヒカルが答え、栄人も質問がないと答えると周囲を見回す。
「あら? どうかしたの?」
「いえ。……何もない場所なんですね」
「ああ……。この辺りは私達が最初にやって来る場所だからね。モンスターも私達人間を警戒して近づいてこないのよ」
「……そうですか」
タツミの言葉に栄人が返事をすると彼女は苦笑を浮かべて言う。どうやらタツミは、栄人がモンスターがすぐ見つからないことを疑問に思い不満を感じているのだと考えたようだが、栄人はそんな彼女の言葉があまり耳に入っていない様子で不安そうにゲートを見つめていた。




