第27話
「紫宝院先輩ですか? 私、赤山ミサキっていいます。今日はよろしくお願いします」
「俺は……」
「ああ、貴方達のことは知っているから自己紹介は不要よ。虹城ヒカル君に十輪寺栄人君」
タツミに自己紹介をするミサキに続いてヒカルも名乗ろうとすると、タツミは彼の言葉を遮って興味深そうな視線をヒカルと栄人に向ける。
「先日の貴方達の戦いは私も見させてもらったわ。二人とも新入生と思えないくらい自分のモンスターを使いこなしていて中々に面白かったわよ? 特に十輪寺君、あの戦いで貴方が見せた同一シリーズモンスターの特殊能力の連続使用は本当に凄かったわ。新シリーズのモンスターカードをあれだけ揃えるにはかなりのお金が必要なはずなのに……ご家族に大切にされているのね?」
「……エエ、ソウデスネ」
タツミの賞賛の言葉に栄人は、感情の起伏が感じられない平坦な声で返事をする。
栄人が使えばいつでも異世界へ転移できるゲートカードの所有者であること、そして彼が毎日ゲートカードを使って異世界に行ってそこで取ってきたカードを政府に売っていることは、一部の人間しか知らない極東国の国家機密である。そのため栄人は表向き、新シリーズの泳炎竜を新たに発見した人物の知り合いで、その人物とのツテで泳炎竜のカードを売ってもらっているということになっていた。
……しかし栄人が今持っているカードは全て、この五年間で死ぬような思いをして集めたカードばかりであり、いくら国家機密を守るための国からの指示とは言え、命懸けで集めたカードを金で買い漁ったものと言われるのは気分がいい物ではなかった。
(……まあ、いいか。ここで彼女と出会えたのはある意味ラッキーなんだし)
タツミの言葉に思わず苛立ってしまった栄人は、何とか自分の気持ちを落ち着かせようと、ゲームに登場する紫宝院タツミのことを詳しく思い出すことにした。
ゲームに登場する紫宝院タツミは、極東国でも有数の大企業の社長令嬢であり、召龍学園でも上位の実力を持つカード使いという設定であった。そして彼女は栄人やヒカルと同じくシリーズのモンスターカードを使うカード使いな上、シリーズのモンスターカードは強力な特殊能力を持っていたため、ゲームのプレイヤーの多くはヒロインと一緒に戦える戦闘ではタツミと一緒に戦うことを選び、ドラグーン・アカデミーのプレイヤーの多くは通常のエンディングかタツミとのエンディングしか見たことがないと言う者も多かったりする。
ゲームの紫宝院タツミが登場するのは中盤を過ぎたくらいで、しかも好感度を上げるのは中々に大変だったことを栄人は覚えている。なので今回の異世界実習でヒカル達の実力を調べると同時に、ヒカルとタツミを仲良くさせれば大きな戦力になるのではと栄人は考えたのだった。
「さて、ここでいつまでも話していても仕方がないですし、異世界実習を始めましょうか」
タツミはそう言うと栄人達三人を連れてゲートが出現する建物の中へと向かう。建物の中では青白く輝く光の柱、ゲートが地面から立ち昇っており、すでに建物の中に入っていた異世界実習に参加する学生がゲートに触れると、学生の体は光となってゲートの中に吸い込まれていった。
「これが、ゲート……。異世界の扉か……」
「凄い、初めて見た……」
(そう言えば俺も『泳炎竜の故郷』の効果以外で異世界に転移するのは初めてだな……)
ヒカルとミサキ、そして栄人が初めて見るゲートに思わず緊張していると、そんな彼らにタツミが話しかける。
「大丈夫よ。ゲートに触れたらすぐに異世界に行けるわ。特に痛くも何ともないから安心してゲートに触れなさい」
そのタツミの言葉に栄人達がゲートに触れた瞬間、彼らの視界が光で染まった。




