第26話
異世界実習の授業は、優秀な成績を評価されて異世界での単独行動を認められた生徒以外、同じ学年の生徒同士で三人から四人のチームを組んで行うことが決められている。そして異世界実習のチームは学園側が生徒達の成績などから組み合わせを考えており、栄人のチームはと言うと……。
「……まさか、お前達と同じチームになるだなんて思わなかったな」
「あはは……。そ、そうだね……」
「そうか?」
いよいよ初の異世界実習の授業という時、島の中央にあるゲートが出現する建物の前で栄人が自分と一緒に異世界に行くチームのメンバー、ヒカルとミサキの顔を見ながら言うと、先日のミオの件もあって気まずいミサキは引きつった笑みを浮かべるのだが、ヒカルの方は特に気にしていない様子で首を傾げていた。
先日の戦いでゲームでの虹城ヒカルと十輪寺栄人が関わるイベントは終了したはずなのだが、現実の栄人とヒカルの縁は切れていないようであった。
「だけど同じチームに十輪寺がいるのは心強いな。頼りにしている」
「そ、そうだね。ヒカル君と戦っていた十輪寺君ってとても強かったし、十輪寺君がいたら異世界でどんなモンスターが現れても楽勝だよね?」
「いや、カードが欲しかったら自分でモンスターを倒さないと駄目だろ? 俺がモンスターを倒しても、それで手に入れたカードは俺の物になるんだぞ?」
「え? ……あっ! そうだったね」
ヒカルとミサキと話しながら栄人は、二人と一緒に異世界実習を行うのは予想外であったが、これはこれで好都合だと思うことにした。
ゲームの十輪寺栄人との戦いは終わったが、それ以外のイベントや敵との戦いはまだ残っている。先日の戦いではすぐに決着が着いたせいでヒカルの実力がほとんど分からなかったため、この異世界実習はヒカル、そしてミサキの実力を知るいい機会だと栄人は考える。
ゲームのドラグーン・アカデミーではミサキを初めとする複数のヒロインが登場して、ラストバトルを含めたいくつかの戦いでは、プレイヤーは主人公の虹城ヒカルだけで戦うかその時点で一番好感度が高いヒロインと一緒に戦うかを選ぶことができた。つまりヒカルの実力が低くてもミサキの実力が高ければ、彼女と協力をすることでこれからの戦いも切り抜けられる可能性があるのだ。
「それでもうゲートは開いているんだよね? じゃあ、すぐに異世界に行っていいの?」
「いや、駄目だ。まだ引率の人が来ていない」
「引率の人?」
どうやらミサキも他の生徒達と同様に異世界実習を楽しみにしていたようで、もうゲートを使って異世界に行っていいのかと聞くとヒカルが首を横に振って答え、ミサキとヒカルの会話を聞いていた栄人は彼女の言葉に思わずため息を吐いた。
「はぁ……。昨日、先生が言っていた話を聞いていなかったのか? 俺達新入生は最初の数回は先生か上級生が引率として同行するんだ。引率の人がいなければゲートは使わせてもらえないぞ?」
「そういうこと。お待たせしてごめんなさいね」
栄人がミサキに説明をしていると、一人の女性が栄人達に話しかけてきた。
栄人達に話しかけてきたのは、長く伸ばした薄紫色の髪が特徴的な召龍学園の学生服を着た女学生であった。
「初めまして、新入生の皆さん。私の名前は紫宝院タツミ。貴方達の一年先輩で、今回貴方達を異世界に案内する引率役よ。よろしくね」
(紫宝院タツミ……。ここで登場するのか?)
引率役だと言う女学生、紫宝院タツミの名前を聞いて栄人は心の中で首を傾げる。
何故なら紫宝院タツミは赤山ミサキと同じくゲームのドラグーン・アカデミーに登場するヒロインの一人なのだが、ゲームでは紫宝院タツミが登場するのはもっと後のタイミングだったからだ。




