第21話
結局、栄人とヒカルの戦いは、ヒカルが気絶して戦闘不能ということで栄人の勝利となった。
それから栄人達はヒカルを医務室に運び、ヒカルをベッドに寝かせた後で栄人が一人呟く。
「それにしてもどういうことなんだ?」
「? どういうことって、何のことです?」
栄人の呟きを聞いてユキが首を傾げる。
「いや、さっきの戦いのことだよ。ヒカルのヤツ、まだライフポイントが残っていたのに何で気絶したんだ?」
カードからモンスターを召喚している間、モンスターを召喚した人間は専用のパワードスーツによって守られて、モンスターの攻撃を受けてもその身に傷一つ負うことはない。それなのにまだライフポイントが残っていてパワードスーツが消えていないのに、ヒカルが気絶したことを栄人が不思議に思っていると、ユキが苦笑を浮かべて答える。
「いやいや、栄人様? いくらパワードスーツがあってもダメージを受けたら、傷は負わなくても衝撃を受けますよね? ヒカル君はそれで気を失ったんと思いますよ?」
「それは違うだろ? 流石に衝撃を受けたくらいじゃ気絶しないだろ?」
変な話かもしれないが、パワードスーツを着用している間に攻撃を受けても傷を負うことはないが、衝撃まで完全に消すことはできないことは栄人も知っている。先日だって異世界でヴォルダイブ・ビグマスの特殊能力でダメージを負った時も衝撃を受けたが、それでも衝撃だけでヒカルが気絶したことが信じられない栄人にユキが説明をする。
「それは栄人様だから言える言葉なんやで? いいですか? 普通は何回も訓練や実戦を重ねることで少しずつダメージを受けた時の衝撃に慣れていくもんで、栄人様の場合はこの五年間の戦いで衝撃に慣れています。だけどヒカル君はまだろくにモンスター同士の戦闘訓練すらしてへんから耐えられなかったってわけですわ」
「………そう言われたら、そう、なのか?」
ユキに言われて栄人は五年前のことを思い出す。
確かに五年前、異世界でカード集めを始めたばかりの頃は、敵のモンスターの攻撃を受けて気絶しそうになったことが何度もあった気がする。そのことを考えれば特殊能力で八ポイントのダメージを受けた時の衝撃にヒカルが耐えられなかったことも仕方がないのかもしれない。
それと同時に栄人は、泳炎竜の特殊能力によるダメージでヒカルが気絶した時、自分達の戦いを観戦していた観客達が驚きの視線をヒカルではなく自分に向けていた理由を、何となくだが理解できた気がした。
「うう……」
栄人とユキが話をしているとベッドの上で寝ていたヒカルが目を覚ました。
「ヒカル君!」
「……ミサキ? ここは一体……?」
ヒカルが目を覚ましたことにミサキが声を上げると、ヒカルは上半身を起こして周囲を見回す。そしてヒカルは今いるのが医務室だと理解すると、自分に何が起こったのかを理解する。
「……そうか。俺は負けたのか。……十輪寺」
栄人との戦いに負けたことを思い出したヒカルは、栄人に視線を向けて話しかける。
「俺? 何だ?」
「俺は何をしたらいい?」
「……何?」
栄人がヒカルの言葉の意味が分からずにいるとヒカルが更に話しかけてきた。
「さっきの戦い……俺が勝ったらミオさんが泣いている理由を説明してもらうと言ったが、負けた場合のことは決めていなかった。だから負けた今、俺は何をしたらいい?」
「そういうことか……」
ヒカルの言葉の意味を理解した栄人は、少し考えるとヒカル、ミサキ、ミオの顔を見てから口を開く。
「……だったら、俺達の話を聞いてくれないか? 俺とミオの関係とか、何で昼休みにミオが俺に頭を下げたのか。実際のところ、ミオが頭を下げた理由はまだ俺も聞いていないんだ」




