第20話
「よし! うまく決まった」
栄人は自分の予想が的中してヒカルにダメージを与えたことに、パワードスーツの下で笑みを浮かべる。
(ヴォルダイブ・ザイラーの攻撃はスターズ・レッドの特殊能力で防がれているだろうが、それでも破壊した四体の泳炎竜の特殊能力によるダメージは防げないはずだ)
スターズ・レッドの特殊能力はあくまで自身の防御力を高めて敵のリーダーモンスターの攻撃を防ぐもので、ライフポイントに直接ダメージを与える泳炎竜の特殊効果は対象外である。
四体の泳炎竜のカードを破壊したことでヒカルに与えたダメージは八ポイント。ゲームの「Dragon&Dragoon」でのプレイヤーのライフポイントは三十ポイントで、現実のパワードスーツの耐久力も同じくらいであり、これでヒカルのライフポイントの約三分の一を削ったことになる。
(ヒカルの手札はあと二枚。その二枚が光装竜カードだとしても、ヴォルダイブ・ザイラーの特殊能力で向こうのサポートモンスターを破壊しながらこちらもサポートモンスターを召喚していけば、すぐにライフポイントを削り切れる。……ん?)
栄人がこの後どうやって残りのヒカルのライフポイントを削ろうか考えていると、ヴォルダイブ・ザイラーのブレイジングミサイルと四枚の泳炎竜カードの特殊能力によって生じた爆発の煙の中から、ヒカルを背中に乗せたスターズ・レッドが現れる。しかしスターズ・レッドの様子はどこかおかしく、力無く地面に降り立つとすぐに倒れてしまう。
「……何?」
「うう……」
突然地面に倒れたスターズ・レッドを見て栄人が首を傾げていると、スターズ・レッドの背中に乗っていたヒカルも小さくうめき声を上げて崩れ落ち、地面に倒れてしまう。するとヒカルはどうやら気を失ってしまったようで、彼の姿は白いライダースーツ姿から召龍学園の学生服姿へと戻り、スターズ・レッドの巨体も光の粒子となって消え去っていった。
「な、何だ? 一体どうしたんだ? おい、大丈夫か?」
「もうやめて!」
気を失ったヒカルを見て栄人は、何が何だか分からないがそれでもただ事ではないと考え、ヴォルダイブ・ザイラーを進ませてヒカルに近づこうとしたのだが、そこにミサキが栄人の前に現れて両腕を広げ行く手を阻もうとする。
「ミサキ?」
「もうやめて! もう勝負は着いたでしょう!? お願いだからこれ以上ヒカル君に酷いことをしないで!」
「……はい? それってどういう……?」
涙を浮かべながら訴えてくるミサキの言葉に栄人が戸惑っていると、周囲の観客達が驚きの視線を向けてきていることに気づく。観客達はまだライフポイントが残っているのにヒカルが気絶したことではなく栄人の攻撃に驚いているようで、そのことに栄人は更に戸惑う。
(え? いや待って? 何で皆、化け物や加減の知らない乱暴者を見るような目で俺を見てくるの? 確かにさっきは綺麗に特殊能力と攻撃のコンボが決まったけど、あれくらい普通だろ? ヒカルのライフポイントだってまだ全然残っているんだし、むしろこれからが本番なのに何でもう終わったみたいな空気になっているんだ?)
自分が完全な悪役になっていることに気づいた気づいた栄人が何故こうなったのかを考えていると、いつの間に近くに来ていたユキとミオが話しかけてきた。
「栄人様。ミサキちゃんの言う通り、もう勝負はついたさかい。今日のところはこれぐらいで勘弁してやったらどないです?」
「わ、私からもお願いします。もうやめてください」
「…………………………本当にこれって俺が悪いの?」
苦笑をするユキと顔を青くしたミオに言われた栄人は、たっぷり十秒ほど黙った後そう呟くことしかできなかった。




