第16話
「始めるぞ。……来い!」
栄人が戦う覚悟を決めたのを感じ取ったヒカルが右手を自分の胸に当てると、ヒカルの右手の中に五枚のカードが現れた。
この世界の人間が十歳くらいになると手に入れるカードの枚数は三枚から五枚。その点から見るとヒカルは同世代から見てカード使いとしての才能がある方だと言える。
「俺は『光装竜スターズ・レッド』を召喚する!」
ヒカルが五枚のカードから一枚を選んで発動させると、彼の背後に両前脚の部分に大きな機械の翼を生やした伝説に登場する翼竜、ワイバーンに似た姿のモンスターが現れる。そしてそれと同時にヒカルの姿が、白いライダースーツを着用して首に七色のマフラーを巻き、頭にライダースーツと同じ白いヘルメットを被った姿へと変わる。
(やっぱりスターズ・レッドか……)
栄人はヒカルが召喚したモンスター、スターズ・レッドを見て心の中で呟く。
ゲームのドラグーン・アカデミーでも虹城ヒカルが最初に使っていたリーダーモンスターはスターズ・レッドであった。栄人も前世でドラグーン・アカデミーを遊んでいた時は、序盤から終盤までスターズ・レッドをデッキに入れて使っていたのだが、こうして敵対することになると何だか不思議な気持ちとなってくる。
「それじゃあ俺も……来い」
『『……………っ!?』』
ヒカルがモンスターを召喚したのを見届けた栄人は自分も三枚のカードを呼び出し、続いて腰にあるポーチからカードの束を取り出す。栄人がポーチから取り出したカードの枚数は五十七枚で、彼が自分の魂から呼び出した三枚のカードを加えるとデッキ上限枚数の六十枚となる計算で、栄人が持つカードの束を見てヒカルだけでなく周囲にいる観客までもが驚きで声を失くす。
「お、おい……! 何だよ、あのカードの束は?」「二十枚、三十枚どころじゃないぞ? もしかしてデッキ上限枚数の六十枚あるのか?」「嘘だろ? そんな大量のカード、上級生だって持っていないぞ?」「そう言えばあの十輪寺栄人ってヤツ、実家が大会社の社長の息子だったっけ?」「それじゃあ、金の力であれだけのカードを集めたってことか?」「汚ねぇ……! だったら、あのヒカルって奴に勝ち目なんてねぇじゃん」
周囲から観客達の話し声が聞こえてくる。
カードの勝負はデッキの枚数が多い程有利なのだが、この世界では大して強くない、それこそ前世の世界だったら一枚十円の値もつかないカードですら十万円以上の値がついて、この世界の人間はデッキ上限枚数の六十枚すら集めるのが困難なのだ。だから栄人のデッキの枚数を見てヒカルや観客達が驚くのも無理のない話であった。
「『泳炎竜ヴォルダイブ・ザイラー』を召喚」
栄人は魂から呼び出した三枚のカードをポーチから取り出したデッキに加えると、デッキからヴォルダイブ・ザイラーのカードを取り出して召喚し、自身も全身に棘が生えた全身鎧のようなパワードスーツ姿へと変身をする。
そして栄人とヒカルはそれぞれ自分が召喚したモンスターの背中に乗ると、次に自分の持つカードをスーツの胸部分の中央にあるホルスターにセットして、これでお互いに戦闘準備が完了した。
「飛べ! スターズ・レッド!」
(やっぱり最初はそうくるか)
ヒカルの命令に従ってスターズ・レッドは彼を乗せたまま上空へと飛び上がり、それを見て栄人は内心で納得してように頷く。
(こっちの攻撃が届きにくい上空から様子を見ながらエナジーを貯めて、その後でスターズ・レッドの特殊能力で一発逆転を狙っているんだろうな)
栄人は上空を飛ぶヒカルとスターズ・レッドを見ながらヒカルの戦法を予測する。
スターズ・レッドはゲームの主人公が使うリーダーモンスターということで、ゲームのドラグーン・アカデミーの制作陣からかなり恵まれた性能を与えられている。攻撃力と防御力と言った基本能力は平均かそれより少し上といった感じだが、スターズ・レッドは特殊能力を三つ保有しているのだ。
そしてその三つの特殊能力は、使い方次第では格上のモンスターを使うプレイヤーにもスターズ・レッド一枚で勝つことができる「モンスターカードが一枚あれば遊べる」という「Dragon&Dragoon」のコンセプトを体現したような特殊能力であった。




