第11話
「それじゃあ、今日も『日課』に行ってくるから」
「はい。頑張ってくださいな、栄人様」
「………」
ミサキと別れてから数時間後。学生寮の自分の部屋で栄人がそう言うとユキは笑顔を浮かべて返事をするのだが、隣にいるミオは暗い顔をして俯いていた。
「? ミオちゃん、どないしたん? もしかしてあのミサキちゃんのことを気にしてはるん?」
「っ! い、いえ、そういうわけじゃなくて……。そ、その……な、何でもありません」
ユキに声をかけられたミサキは慌てて顔を上げると何かを言おうとしたが、すぐにまた暗い顔となって俯いてしまい、その様子を見て栄人は首を傾げながら自分の中から一枚のカードを呼び出す。
「よく分からないけど、赤山ミサキのことだったらもう気にしなくていいからな? ……アイテムカード『泳炎竜の故郷』を発動! 異世界へと転移する!」
栄人が呼び出したのはモンスターが生息する異世界へと転移するカードで、カードを発動させた次の瞬間、栄人は学生寮の自室から異世界にある島へ転移した。
「転移完了、と。次は『泳炎竜ヴォルダイブ・ザイラー』を召喚」
無事異世界に転移したことを確認した栄人は自分の中から別のカードを呼び出し、カードの力によって自分の相棒と言うべきモンスターを召喚する。そしてそれと同時に栄人の姿も、鋭い棘が生えたパワードスーツを着用した姿へと変わる。
「よし、行くか。さて、モンスターはどこにいるのかな?」
モンスターを召喚し、自分もパワードスーツ姿に変身した栄人は、ヴォルダイブ・ザイラーの背中に乗るとモンスターを探しながら島の中を進んで行く。
ゲートカードの「泳炎竜の故郷」を使って異世界へ行き、そこで見つけたモンスターを倒してそのモンスターのカードを手に入れる。それが五年前にゲートカードを手に入れてからの栄人の「日課」であった。
「どこを探しに行こうかな? 昨日は島の森の中を探していたから今日は……ん?」
栄人がそこまで言った時、島の火山が噴火する音が聞こえてきた。
「火山の噴火……! ヴォルダイブ・ザイラー! 海に行くぞ!」
火山が噴火する音を聞いた栄人はヴォルダイブ・ザイラーを走らせて海の方へと向かう。
この島の火山の噴火は、海中とマグマを行き来しているヴォルダイブ・ザイラーを初めとする泳炎竜と呼ばれるモンスター達の行動が活発になる合図である。行動が活発になった泳炎竜達は島の火山付近、もしくは海岸に現れ易くなって、泳炎竜のモンスターカードをデッキの主力カードにしている栄人にとっては新しい泳炎竜のモンスターカードを手に入れてデッキを強化する絶好のチャンスであった。
栄人がヴォルダイブ・ザイラーを全速力で走らせると、ヴォルダイブ・ザイラーは数分で海岸へと到着し、到着するのと同時に一体の黒い影が海から現れるのが見えた。
「早速出てきてくれたか。さて一体どんなモンスターが……?」
海から現れた黒い影、モンスターを発見した栄人は嬉しそうな声で呟いてから、モンスターの姿を確認する。海から現れたモンスターはワニによく似た姿をしていて、頭部が機械で口の部分には鋼鉄製の牙が何本も並んでいた。
「あれは……『ヴォルダイブ・ビグマス』か」
海から現れたモンスター、ヴォルダイブ・ビグマスはヴォルダイブ・ザイラーと同じ泳炎竜と呼ばれるモンスターの一体なのだが、ヴォルダイブ・ビグマスを見つけた栄人の声は先程とは違ってあまり嬉しそうではなかった。
「ヴォルダイブ・ビグマスのカードはもう三枚以上持っているんだけどな……」
カードゲームの「Dragon &Dragoon」のルールでは同じ名前のカードは最大で三枚までしかデッキに入れることができないことになっている。このルールは実際のモンスターを使った戦いでも同じらしく、以前同じカードを三枚以上デッキにいれた状態でモンスターを召喚した時、四枚目からのカードは自動的にデッキから外されたのだった。
「でも政府も泳炎竜のカードが欲しがっているってユキが言っていたし捕まえておくか。……え?」
五年前、栄人がゲートカードの所有者であると分かった日から栄人の主なカードの取引相手は極東国の政府であり、その極東国がカードの研究のために泳炎竜のカードを欲していることをユキが話していたことを思い出し、栄人はヴォルダイブ・ビグマスに攻撃を仕掛けようとする。しかしその時、突然海から十体以上のヴォルダイブ・ビグマスが現れた。




