97話
エルフの国、アマラ王女の屋敷ではオリザとミトソが話し合っていた。
「それであいつは何て言っている?」
「最初から全く変わらん。アルマは商人ギルドに連れていかれた。自分はただ呼び出す囮に使われただけだと」
先日の夜、アルマが突然姿を消した。使用人たちを問いただすと、その内の一人から知り合いと言う男から手紙を渡すように頼まれた事を話した。そして、さらに門番が男に少しの間知り合いと内密の話をするから、その間持ち場を離れて欲しいと頼まれたという。すると、門の外にミトソの知っている人間ロンが一人その場に倒れていた。アルマの姿はなかった。
使用人も門番も尋問すると賄賂を受け取っていた。エルフと取引をしている商人ギルドの関係者だと思われたので、まんまと出し抜かれてアルマは連れ去られたのだとようやくわかった。
「アルマが連れ去られたのは事実だ。問題はあいつが本当にただ利用されただけなのかどうかだ」
屋敷の地下でロンは椅子に縛り付けられていた。多少強引な手も使ったが、ロンは同じ事しか言わなかった。ミトソはロンに直接会って聞いてみる事にした。
「久しぶりだね、ロンのおじさん」
「やあ少年。相変わらずお兄さんとは呼んでくれないか……」
顔を近づけて真っすぐにミトソはロンを睨みつける。
「彼女は本当に商人ギルドに攫われたのか?」
「そうだと何度も言ってるだろ? それもギルド長のガーメット・オゼーゼ直々の命令だった。俺は彼女と直接会った事があるから、彼女を商人ギルドに勧誘して来いと依頼を受けていた」
「それが、どうして外で眠ってなんかいたんだ?」
「商人ギルドは初めから彼女を引き込む気だったんだ! 彼女の意思に関係なく! それで、攫うのに俺を利用したんだ! そんな強硬手段に出るなんて知らなかった! 早くしないと彼女はどんどん離れていくぞ!」
ミトソは考える。ロンは信用できる人物か。まだ何か隠し事をしていないか。彼がこちらに引き込まれる事も見越された罠ではないか。あまりにも疑う要素が多すぎる。
「ドワーフの国で僕が言った事は伝えなかったのか? 彼女には何も力はなく、僕こそが酒を密造していた張本人だって」
「利用できると思ったんだ……自分だけ知りえる特別な情報だ。秘密にしておいておこうと……」
「なるほどね。やっぱり商人は信用できないな」
「でも、このままだと商人ギルドに骨の髄までしゃぶりつかされるぞ! 奴らは少しでも儲けを出すためなら彼女をどんな風に扱うか分からないぞ!」
ロンは信用できない。だが、その裏を取る時間もない。誰か商人ギルドと敵対している第三者の力を借りる必要があるとミトソは考えた。お互いに信用できない者同士で手を組み、亀甲状態を作る。その上で彼女を助けに帝国へ戻る。その役に立ちそうな人物に、ミトソは心当たりがあった。




