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94話

 陽が落ちて、夜になった後、アルマは使用人に頼んで少しだけ屋敷の外に出られるようなった。会う場所は屋敷の入り口のすぐ前。門番がすぐ近くにいるのに、そんな何か悪い事なんてできるはずがない。だから、安心してアルマはロンと会う事が出来た。彼は門のすぐ近くで一人立って待っていた。

「久しぶりねロン。あなたもエルフの国に来ていたのね!」

「ああドワーフの国以来だね。なんだかちょっと雰囲気変わったかい?」

 ロンは少し驚いたようにアルマを見た。流浪の旅は彼女を少し成長させたのだろう。彼は素直にそう漏らした。

「貴方はどうしてここに?」

「ああ、僕は君と別れた後、商人ギルドから仕事を貰えるようになってね。その使いでここに来たんだ」

「本当? それってギルドに認められたって事? 凄いじゃない!」

「ああ、本当に……それでもうすぐ自分の店も持てるくらいになるかな。君がいたお陰で……」

 ロンの口ぶりは何か歯切れの悪い返事だったが、アルマは気づかなかった。

「ドワーフの国では別れの挨拶も出来なくて、あの時はごめんなさい。どうしても急に出ていかなくちゃいけなくなったの」

「君は、君たちは色んな所を放浪してたみたいだね。ミトソって少年と一緒に」

「ええ、また数日後にはエルフの国を出るつもりよ。だから、その前に会えてよかったわ」

 アルマはロンに会えて嬉しかったが、ロンはどこか不自然だ。何か言いたいことがあるようだが、なかなか本題に入れないような、そんな感じだった。

「どうしたの?」

「いや、それがその……うん言わなくちゃいけないな。君に頼みたいことがあるんだ。君に商人ギルドの本部に来て欲しいんだ」

 突然の頼みに驚いたけれど、既に昼間王女からの勧誘を断ったばかりだ。そう何度もいろんな場所から勧誘を受けるとは思ってなかったが、アルマには既に目標が出来ていて、それは受けられなかった。

「ありがたいんだけど、ごめんなさい。私はまだやる事があるから行く事は出来ないわ。その為に会いに来てくれたんでしょうけど、力になれずごめんなさい」

「ううん、それならいいんだ。運が悪かったと諦めがつくから……少し残念だけどそれで終わりだ。彼女は連れていけない!」

 ロンは最後、誰かに聞かせるように大きな声で叫んだ。だが、二人は知らなかった。近くにいるはずのエルフの門番が、この時は姿がなかったことに。

 突然、アルマの目の前が真っ暗になった。頭の上から何か被せられたように。そして足が急に地面から離れる感覚がした。

「おい、手荒な真似はしないと約束したはず……!」

 ロンの声が急に途切れた。それから何かが地面に倒れる音。彼女は身動きもできないまま、身体がどこかへ向かって行く感覚だけしか分からなかった。

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