85話 商人ギルドの思惑3
「ギルドからは何て言ってきている?」
エルフの国に一番近い街へ向かう途中、ロンにギルドから急ぎの伝書が届いた。こういうやり取りはギルドが管理している訓練させた鳥を使って行われている。情報は金と同じくらい重要で価値のあるものだ。だからこそ、ギルドはあらゆる手を使って情報収集にも力を入れている。
「どうやら帝国の軍が敗走したらしい。ほんの数日前、エルフの国から撤退せざる得ない程の大打撃だそうだ」
ギルド長のオゼーゼが付けた護衛兼連絡役のダゴツが報告する。見かけは腕っぷしが自慢の荷運びしか能のなさそうな強面の大男だが、立ち振る舞いは自然だが、常に攻撃を受けたら対応できるように、常に周囲に気を張っているなかなかの切れ者のようだ。オゼーゼが部下として直接従えているだけはある。文字の読み書きも無駄なく取次いで行っている。
「帝国が? エルフの領土から出なきゃいけないなんて、かなりの大損害じゃないか」
「エルフの間者が紛れ込んで野営地に細工をしたらしい。それも、商人ギルドが運び込んだ森に火を付ける資材を逆に利用されたそうだ」
内部から崩されたという事か、それは予想できなかっただろう。だが、その結果を伝えて来たのは商人ギルドにもきっと不利益を与えているに違いない。
「もしかして、商人ギルドの中にエルフと組んでる連中いると思われている?」
「そうだ。資材を運び込んだその日の夜に使われた。指揮官のデュオンは輸送を担当している商人ギルドから、エルフに情報が漏れていたのではないかと考えている」
帝国指揮官のデュオンの指摘は近からずも遠からずだ。商人ギルドは確かに帝国の軍や貴族たちとは内密にエルフとも秘密の取引を行っていた。それは町がない事実だ。だが、どちらか一方だけが大勝ちをするような細工や機密情報の密告などはしていない。じりじりと戦争が長引いてくれた方が、陰で取引を行う商人ギルドは秘密交易を続けて安全に儲けを得られる。戦争に直接介入するような行為は、その取引の期間が短くなる上、危険な橋を何度も渡る様な、選択を迫られる可能性が上がる。オゼーゼはそんな手段は好まない。狡猾に、知らない間に空いてからじわじわと時間をかけて搾取するような方法を好む。
「うーむそれだと確かにマズいね。ギルドの輸送に対する信用が失われたら、裏で行う取引も難しくなる。どうしようか」
「だからこそ、お前がこの取引に呼ばれたのだ。痛手を受けた帝国への支援物資を運ぶついでに、ギルドが何時も使う方法でエルフたちの領地に入り、彼らと取引を行う」
「それってもしかして……」
「帝国が襲撃を受けた時、デュオンは魔女を発見したらしい。つまり、エルフの国に魔女がいて。エルフたちに力を貸していると推測できる」
彼女が帝国の襲撃に関与を? あまり荒事や戦争に関わるような人間には見えなかった。意外だとロンは感じた。
「我々がエルフと行う取引は魔女の身柄の引き渡し。その交渉をお前がするんだ」
明けましておめでとうございます




