79話
「そうか、それで君は自分から火を放ったんだね」
「私を見つけたデュオンの顔を見た時、私は怖くて泣きそうだった。でも、私は目の前で人が傷つけあうのは見たくなかったの」
アルマが火を放ったのは戦局が完全に帝国に不利な状況にすることで、早々に帝国軍を撤退させるというためだった。しかし、その為にデュオンからはより深い憎悪を与える事になった。魔女として帝国に仇なす事で、犠牲を少しでも減らす事に決めたのだ。
「うんアルマはよくやったと思うよ。自分が出来る事を見つけたんだから」
珍しく素直にミトソが褒めてくれた。なんだかんだ言って彼には何度も助けられている。それも彼なりに彼女を気遣ってくれてるのだろう。
「さ、オリザたちと一緒に王女の下へ行こう。今度はきっと歓迎してくれるはずだよ」
ミトソと一緒にオリザたちと合流する。彼らの助けとなった事で、二人と取引するのを認めてくれたようだ。
「後は王女と話すがいい。彼女もこれでようやく休息が取れる」
二人は再びアモラ王女のいる陣地まで連れて来られた。彼女専用のテントに入ると、椅子に座った彼女が待っていた。
「ご苦労であったお二方。オリザから話は聞いてる。帝国軍を追い払うのに役に立ったらしいわね」
慇懃な態度だが、一応二人の功績を認めてくれているようだ。
「これで僕たちの事、認めてくれるよね。それともまだこき使う手立てでも考えているのかな?」
ミトソが刺々しく尋ねる。やはり彼も手先に使われたことはあまりいい気がしないようだ。元神だから当然だろうが。
「私は嘘はつかないし、後から約束を反故にするような恥知らずでもない。我々は貴方たちを歓迎しよう」
どうやらちゃんと取引相手として認めてくれるようだった。アルマはほっと安堵した。
「それで、貴方達は目的があって我々の国にやってきたはず。それは何だったかしら?」
「あんたたちの技術で、造ってほしいものがあるんだ。大きなガラス製の蒸留器なんだけど、結構複雑な形状でね。出来るかな?」
「羊皮紙とペンを持ってくるからお待ちになって。どんな形か書いてもらえばすぐ分かるわ」
そう言ってアモラ王女は大きめの羊皮紙にペンとインク壺を取り出す。これに書いて見せればいいようだ。ミトソがペンを取り、前にアブールが使っていた蒸留器を描くが、実際のそれよりも大きく、樽に蒸留水を注げるくらい大きな物だ。それを描いた大まかな設計図を王女に見せる。
「随分大きな蒸留器ね。確かに帝国の貧相な技術じゃ、これ程の物は出来ないでしょう」
「それで、今度はそちらが僕たちに手伝ってくれる?」
「この程度の物なら造作もないわ。私の町に、これを造れる工房があるわ。そちらに行って造らせましょう。私も久しぶりに城に帰れるのでね」




