78話
「これで終わったかな」
帝国軍が撤退したのを確認した後、エルフたちは森に火が移る前に迅速に消火活動を行った。焼け落ちた野営地で兜を脱いだミトソが、その様子を見ながら呟く。
「お前たちのお陰で、帝国の連中に大打撃を与えてやった。清々しい気分だ」
オリザが隣で自分たちの戦果に満足そうに話す。
「しかし、奴ら火を使うつもりだったとは。事前に阻止出来て助かった。それどころか、相手の計画を逆に利用するとはなかなかやるじゃないか」
「僕はそこまでするつもりはなかったけどね。あんたと決めていた兵たちを酔わせて夜襲をかける計画で、十分だと思ってた」
ミトソは帝国軍の陣地に潜入する直前、革袋一杯の葡萄果汁を用意させた。それを帝国の水に混ぜて、食事の直前に自分の力で発酵させて葡萄酒に変えさせた。それも知らずに帝国の兵士たちは飲んで酔っ払い、その隙にオリザたちが攻撃するという計画だった。
「火を使ったのは彼女のアドリブ」
「ほう意外だな。あまりやる気がなさそうだったが、意外と機転が利く。あれが決定打になって、帝国の連中は逃げるしかなかったのだからな」
「でしょ? だから、これで僕らが役に立ったのは間違いないよね」
「認めざるを得んな。女王の下に連れて行こう。今度は来賓としてな」
オリザはそう言って、部下に命令を下しに行った。ようやくエルフたちの信用を得られたようで、ミトソは安どのため息をついた。
その後でミトソはアルマを探しに森へ戻った。彼女は野営地の近くの大きな樹に下で座り込んでいたので、すぐ見つかった。
「お疲れ様。オリザたちは僕らを信用してくれたみたいだよ。これで少しはこの地で寛いでお酒が飲めるはずさ」
そう話しかけても彼女はあまり嬉しそうじゃなかった。落ち込むように下を向いたままだ。
「嬉しくないの? ようやくあの気難しいエルフたちから信用を得たのに、特に君が起こしてくれた火計を評価したみたいだよ」
「私は……」
アルマがぽつりと話し始めた。
「ミトソ達の計画に気づいた時、まだ足りないと思った。帝国の人たちはきっと反撃に移る。そうすると、きっともっとたくさん人が傷つくと思った」
ミトソが自分には何も教えなかったのは、彼女を戦争に極力関わらせないようにするためだった。だが、最初の計画の後、アルマは意外にも自分から帝国の保管物資から火付け道具を取り出して準備し始めたのだ。
「デュオンが反撃の声を上げたから、私は撤退せざるえないように野営地に火を放ったの。そうすれば、戦う間もなく逃げるしかなくなると思ったから」
彼女が火を放ったのは帝国に反撃の隙すら与えず、逃げる事しかできなくなるするためだった。そうすれば、余計な被害が出なくなるという彼女なりの考えがあったのだ。




