74話
「ねえミトソ、何か他の方法はないものかしら?」
「他の方法って?」
ミトソが食糧庫で何かしらの細工を施した後、アルマは彼に聞いてみる事にした。
「エルフの人たちが喜びそうな他の方法……貴方たちの今の計画だと、今夜エルフたちが奇襲を行う事になってるのよね?」
「そうだよ。オリザと相談して決めていた事だから、これを成功させれば、少なくとも彼も僕たちと取引に応じてくれるはずだよ」
「でも、ここにいる帝国の兵士たちは沢山傷つくわよね……」
ミトソはアルマの言いたいことを理解したようだ。しかし、彼の表情は険しかった。
「あのデュオンが何を言っていたかは分からないけど、今の僕たちはエルフの使い走りだよ? それ以外の事をしたら、エルフには見捨てられるし、帝国には裏切り者として処刑される。誰も得をしない」
「分かっているけど……!」
「戦争を始めたのは帝国で、エルフたちはそれに対応してるだけ。僕らも蒸留酒を造るためにエルフに手を貸して、その対応をしているだけ。余計な事をしようとすれば、必ずどこかでこじれる。それは避けようのない運命で、決して変えようのない事実だよ」
普段は飄々と気分屋な彼が真面目に説いている。元神として彼なりにそこは線引きして考えている事なのだろう。だから、自分が神の力を失ってもそれを受け入れて生きていく事に文句を言わない。
「それでも納得がいかないというなら、最後まで自分の出来る事を考える事だね。君が何をするか、僕はそれを止める事はない」
それだけ言うと、戦の準備をしている他の兵士たちの中に紛れ込んで、帝国の兵士の様に振舞う。自分のできる事。アルマはそれを考えるが、今は全く思いつかない。彼女が何をしてもミトソはそれを止める事はないという。誰も傷つかず、エルフたちを納得させる方法。本当にそんな方法があるのか。恐らくそんな都合のいい方法なんてないけれど、ミトソとエルフたちの攻撃が行われるまで、まだ時間はある。だったらその瞬間まで考えるしかない。
アルマも兵士たちの中で様々な方法を試行錯誤する。しかし、いたずらに時間は過ぎていく一方で、やがて日が落ち始める。自分の正体を隠しながら兵士として振舞うので精いっぱいで、他に何かする余裕もない。こうしている間にも、エルフたちが帝国の野営地を襲う準備を始めている。ミトソは何も言わないが、常にアルマの近くで他の兵士たちと談笑したり、行動をしている。
ミトソとオリザはどんな方法で帝国に奇襲をかけるつもりなのだろうか。




