72話
「とにかく急いで探すよ。さっきみたいな事があると悪いから二人で一緒に探そうよ」
そう言われて、彼に続いて帝国の野営地の中を歩き回った。デュオンが言っていた通り、森に火を付けるための油や資材が既に野営地に運び込まれている。これらも商人ギルドが用意した物だろうか?
「付いて行った輸送隊はこれを持ってきてたのかもしれないな。僕たちには何も教えてくれなったけれど」
あの時既に、エルフへの攻撃準備が始まっていた事になる。その事を知りながら商人ギルドはエルフ達にも、彼らの国に向かう私たちにも情報は漏らさなかった。本当に商品の取引だけが目的の関係だったのだ。
「この中かな? ちょっとやることがあるから、誰も入らないように見張ってて」
一つ一つ野営地に張られたテントの中を調べて、食料が置かれた場所を見つけた。ミトソはそう言って中に入って言っていた計画の準備をするようだ。アルマは外で待つことになったが、見張っていろと言われても、誰か来たらどうしたらいいのだろうか。
「ん? お前、さっき指揮官に睨まれてた奴じゃないか」
「こんなところで何をしてるんだ?」
すると、二人の兵士に見つかった。やはり、先ほどのデュオンから指摘された事で他の兵士から認識されてしまっていたようだ。
「お前声が出せないんだってな。丁度いい、少し食料の量を調べるからそこをどいてくれよ」
「もしかしたら、過剰に余ってるかもしれないからな。俺たちが調整してやるよへへ……」
どうやら、盗み食いをするつもりらしい。しかし中にはまだミトソがいる。彼らを入れるわけにはいかない。
「なんだお前どけよ、俺たちはその中に用があるんだよ!」
「生意気な奴だ。ちょっと立場って奴を分からせてやろうか?」
入口の前に立って二人が入るのを阻止するが、案の定兵士二人の反感を買った。声を迂闊に出す事も出来ないのに、相手は二人がかりでアルマに向かってきた。
「何をしている!」
野営地中に響くような怒声が飛んで来た。声の主はあの騎士団長のデュオンだ。
「あ、指揮官殿!」
「食糧庫前に集まって何をするつもりだった? もしや備蓄された食料を盗むつもりだったか? 軍法会議にかけるぞ!」
「いや、俺たちは……すいません!」
慌てて兵士たちは逃げて行った。そして、アルマの前に今度はデュオンが立っている。
「大丈夫か? 奴らに何もされてないか? 野営地の見回りをしていたら、お前があの兵士たちを食糧庫に入れないようにしていたのが見えた」
兵士二人はいなくなった。しかし、今度はあの因縁深いデュオンと二人っきりになってしまった。




