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69話

 笛の音が帝国の陣地に響く。それまで各自思い思いの行動をしていた兵士たちが、一斉にある場所へ集まっていく。

「どうやら司令官のお出ましのようだね」

 規則正しく並び始める兵士たちの列の中に、アルマも慌てて加わろうとする。

「ミトソ?」

 隊列に加わろうとしてる内にミトソとはぐれてしまったようだ。不安だが一人で近くの列に加わる。彼もきっと近くにいるだろう。そう考えて不安を払しょくする。

「帝国騎士団長デュオン・サングイネ殿が帰ってこられたぞ!」

 聞き覚えのある名前が聞こえて来た先には、直属の部下を連れた騎士団長デュオンの姿が見えた。まさか自分を処刑しようとした張本人とまた出会うとは思ってもみなかった。馬に乗っているが、着ている鎧には折れた矢や汚れが目立ち、つい先ほどまで戦争をしてきたばかりという風体だった。にもかかわらず、その顔には疲れは見えない。

「団長は元は貧民の出らしいが、戦争で功を奏して騎士団長にまでなったらしいな」

「エルフの猿どもを蹴散らして、俺もあんな立派な騎士になりたいぜ」

 ひそひそとそんな声が聞こえてくる。デュオンの噂や彼に対する評価がそこかしこから聞こえてくるが、兵士たちからの評判はとても高いようだった。

実際に、エルフたちの領地へじわじわと前線を押し上げており、オリザからも今の帝国軍は厄介である事を聞かされていた。それが、彼の実力の表れなのだろう。だから兵士たちからも信頼を得ているのだろう。

「エルフの軍は、森という環境を利用し、伏兵をそこら中に配置している。明日の朝、森に火を放ち、奴らをいぶり出す!」

 デュオンの宣告にアルマだけでなく帝国の兵士たちも騒然となった。森に火を放つなんて延焼して自分たちにも被害が出るとは考えてないのだろうか。

「安心しろ、いずれ我ら帝国の領土となる大切な土地だ。周囲の地形や風向きなどを考慮して、すぐに火は落ち着く。あくまでエルフどもを追い出すための計画だ!」

 デュオンが合図すると、部下の騎士がこの辺りの地形が簡潔に書かれた大きな地図を広げる。森の中を横切る川がある。その辺りまで森は焼けるだろうが、それ以上は延焼しないように用意をしてあるとデュオンは兵士たちに説明する。

「エルフ共は後退せざるを得ないが、我らはさらに前進する。そこまで行ければ後は砦を作り、新たな拠点としてそこからさらにエルフを攻める事が容易になる」

 前の方で歓声が上がる。作戦は兵士たちにも分かる様に説明されて、その見込める効果は高いようだ。兵士たちの士気もつられて上がる。

「この戦で得られるものは多い。いずれ諸君たちも騎士になる者も出てくるだろう。そのために、明日の準備を心掛けて置く様に!」

 作戦は明日にも始まる。これをエルフたちに伝えなければいけない。だが、まだ連絡手段すら見つけていないのにどうすればいいのだろうか、アルマは必死で考えた。

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