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68話

「それでは、貴様らには帝国の陣地に潜入してもらう」

 帝国軍の鎧や兜を着せられ、外見はすっかり帝国の兵士そのものだ。これらの装備はどうやって入手したのか、聞かない方が良さそうだ。少なくとも元の持ち主は生きてはいないだろう。

「タイミングを見て陣地に紛れたら、そこで得た情報は何かに書くかとにかく持ってこい。手段は何でもいい」

 要は自分たちでどうにかしろという事だ。殆ど援助もなくどうすればいいのだろう。とにかく機密情報を手に入れて渡せばいいのだろうか。

「ミトソの奴が言っていた物も用意した。それ以外にもこちらに有利になる事をしてくれば、女王も喜びになる」

 ミトソが頼んだものは何だったのだろう。聞いてみても内緒と言って教えてくれなかった。ただ、「夜になったら分かる」とだけ彼は言っていた。

慣れない格好をしたまま、二人だけで周りを警戒しながら帝国の陣地に潜入する。エルフ達のに比べて広く、兵士たちの寝るテントの様な物も並んでいる。立派な軍の前線基地と言った所か。兵士の一人がこちらに歩いてくるのが見えた。アルマは慌てて隠れる場所を探そうとしたが、同じく変装したミトソが腕を掴んだ。

「落ち着いて、逆にもっと堂々としないとかえって怪しまれるよ」

 ミトソの言う通り、落ち着いてその場に直立する。二人とも着けている兜で顔は隠れているため、一目見ただけではアルマの事も女性とは分からないようにはなっている。兵士は妙な動きをしたと思ったら急に直立したアルマの事をじろじろ見ていたが、そのままどこかへ行ってしまった。

「取り合えず、食料の保管場所を探そう。ついでに何か分かれば運がいいくらいでさ。気楽に行こうよ」

 そう言ってミトソは帝国軍の陣地の中を歩きだす。アルマは一人になるのが怖くてその後をついていく事にした。

帝国の陣地も様々な兵士がいた。他の兵士と談笑している者、鍛錬をしている者、見回りをしている者。歳もアルマと同じくらいの若い者が殆どだ。

「彼らは集められたただの兵士だろう。農家の次男とか、食いっぱぐれた貧乏な人間とかそういう普通の人たちだ」

 ミトソがそう言う。要は必要に迫られて集められた人たちだ。争いがなければもっと普通の生活も出来たかもしれないのにと、アルマは同情の念を感じた。

「忘れないでよ、僕たちはその彼らの敵であるエルフのために働いてるんだから」

 エルフの人たちも同じように元は普通の生活をしていたはずだ。それなのにこうして敵対して戦争をしている。今まで戦争と無縁で生きていたが、生まれる場所が違っていたら、自分もこの戦争に巻き込まれていたのかもしれない。

 しかし、この戦争は帝国が、エルフの領地を奪うための戦争だ。前世の価値観で言うならば、例え味方でも侵略戦争には手を貸せないとアルマは思った。

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