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61話

「まだ帝国がエルフの国と直接戦う前、出来たばかりの帝国は国内をまとめるのに必死で、まず信仰を一柱の神に限定させた。前に話した奴だよ」

「帝国の主神エグノールス、それは自分の所の神様だもの。当然憶えているわ」

 帝国が崇める偉大で厳格な神。その威光と力は、まだ人間がバラバラの小国同士で争っていたのを、瞬く間に吸収し一つの巨大な帝国を立ち上げる程だ。

「そいつ自体はまだ最近生まれたばかりで、人間で言うと僕の息子みたいな関係性だってのも話たよね?」

「その事自体は未だに信じられないけど、確かに聞いたわ」

 帝国の主神は酒の神ミトソから生まれたという。神々が何か行動したりするだけで新たな別の神を生み出す事があるらしく、人間が産まれるのとは全く異なる概念だ。

「まあ息子でも何でもいいけど、とにかくエグノールスは厳しい戒律で他の国々で奉られていた神の信仰を止めさせて、自分だけに信仰を集めさせた」

 その結果、多くの神が信仰を失ってミトソの様に、各地に散り散りになって人間の様に生きていくのを余儀なくされた。

「それで僕はせっかくだから、美味しいお酒を求めて世界中を放浪した。その内の一つがここエルフの国で、暫く滞在していたわけ」

「信仰を失って怒ったりはしなかったの?」

「最初はちょっと嫌だったけど、だからと言って結果が変わるわけじゃないから別にどうでもいいよ。長く生きていればそう言う事もあるさ」

 大らかなんだか何も考えてないのか、特に反抗したりするつもりはなかったようだ。多分他の力を失った神も似たような考えなのだろう。もしかしたら案外のんびりと、自力で帝国のどこかでひっそりと暮らしているのかもしれない。

「それで本題のエルフの国だけど、最初は良かった。酒になる果物がたくさんあったからね。エルフの連中も僕が元神だと知ったら、醸造の仕方を学んで色んな酒を造り始めた。何より帝国法の様に酒を禁止する教義や法もなかったからね。自由に酒を造ることが出来たんだ」

「それなのに、どうしてエルフの国を出る事になったの?」

 そのままエルフの国でまたちゃんとした神として祀られていたかもしれなかったんではないだろうか?

「そこでさっきの名前を出した王女が関係してくるんだ」

 エルフの王女アモラ、彼女とミトソはどういう関係だったのだろう。

「彼女はね、僕がいた頃はまだ姫だったけれど結婚はしていなかった。それで、その相手に僕が選ばれた」

「それって……!」

「王女は僕の元婚約者だったわけ。でも一方的に決められたんじゃたまった物じゃない。だから僕はすぐにエルフの国を去った」

 結婚相手、元婚約者、それを反故にしたというのだから、不信感を持たれて当然だった。

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