6話
「あら? 部屋の陰に下に続く階段があるわ?」
地下室があるのだろうか。村長は何も言ってなかったが廃墟に地下室がある事は知らなかったのだろうか。もしかしたら何かあるかもしれないと思い、アルマは下りてみる事にした。
そこはひんやりと涼しい空気が漂っている空間で、石壁で造られているおかげか、地上よりも劣化がほとんどなく、こちらの方が居心地が良さそうだった。陽の光が当たらず暗い室内にも徐々に目が慣れてくると、部屋の中は色々物が残っていることに気づいた。
「もしかしたら、お金の代わりになる物とか残ってるかも……!」
見つけたのは水汲み用の桶、鍋や農具等の日用品ばかりだったが、その中で驚くものが見つかった。
「これは……麦!?」
見つけた麻袋の中には種籾用に使うのか、袋一杯に大麦が詰まっていた。
「少し古いみたいだけど虫やネズミにも全然食われてない……村長はここはずっと放置されていたっていうのに……」
一体どうして? 喜びよりも疑問の方が先に浮かぶ。誰もいないはずの廃屋の地下に、手つかずの麦が残っているなんて……。
「ちょっと、人の持ち物を勝手にいじらないでよ」
「きゃあ!」
背後から突然声をかけられた。驚いて振り返ると、自分が下りて来た階段の裏側、壁に沿って置かれた樽の列をまるでベッド代わりに、一人の少年が横になりながらアルマの事を睨んでいた。黒髪に金色に光る瞳を持つ少年。まるで黒猫のようだとわたしは最初感じた。
「子供? 何でこんな廃屋に?」
「廃屋ってここは僕の……まあ住居だけど」
少し言葉を濁して少年が言う。村長は数十年は誰も使ってないと言っていたがどういう事だろうか?
「他に家族の人とかいるの?」
「いいや、僕一人。でも立派な所有者だよ。この建物も、お姉さんが持っているその種籾も」
子供が一人で? もしかして孤児で、ここにひっそりと独りで住んでいるのだろうか? きっと大変な日々を過ごしてきたのだろう。自分も似たような境遇なので同情してしまう。
「まだ幼いのに独りなんて、今まで大変だったでしょうに……」
「別にそうでもないけど……それより、早くそれそこに置いて……」
ぶっきらぼうに少年は麦の入った麻袋から手を離すように言うが、思い直すと少し思案して、少年は言った。
「そうだ、これから丁度やることがあったんだけど、お姉さんにしてもらおうかな?」
「え?」
少年は樽から下りると、その列の中から一つを引きずってアルマの前に持ってきた。ふたを開けると中身は空っぽで何も入っていない。
「おねえさんにはこの樽一杯の麦酒を造って貰おうかな」




