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59話

 木々の間に出来ている道の通りに進んで行く。やがてまだ昼間でも薄暗く感じる程木々の密集する森となってきた。

「もうそろそろエルフの国に入っていてもおかしくないけど、まだ進まなきゃかな」

 ミトソがそう呟く。どこまで行けばエルフに会えるのか、徐々に不安になっていく。そう感じ始めていると、正面の道の真ん中に誰かが立っている。ローブとマントでどんな人物かは分からない。あの人物がエルフだろうか。

「初めて見る顔だな。だが言いつけは守っているな人間め」

 相手は抑揚のない声で話す。くぐもっていて男か女かも分からない。

「あんたが仲介してくれるエルフの人?」

 相手がローブを脱いだ。その下から出た顔を見て明らかに人間ではないことが分かった。長い耳は想像していた通りだが、血の気を感じさせない青白い肌、髪の毛はなくマネキンや仮面のように整ってはいるが、生物感を感じさせないのっぺりとした顔。これがこの世界のエルフなのだろう。

「ちょっと取引をしたいんだ。ここじゃあなんだし、もっと人のいる場所で話がしたいな」

 エルフは無言で手を上げる。すると、木の上からほとんど音も立てずに数人のエルフが下りて来た。既に取り囲まれるほど周りにいたのに全く気付かなかった。全員手に弓を持ち、何人かはまだこちらに矢を向けている。

「これでも足りないか?」

「やれやれ、エルフは話の意図を読んでくれないからやりづらいよ。偉い人のいる場所に連れてくれって頼んでるの」

 物怖じせずミトソが話す。エルフは彼には返答せず、仲間の一人と短いエルフの言葉でやり取りを交わすと、背を向けて歩き出した。

「ついて来い」

 それだけ言って勝手に進んで行く。馬車を動かしてその後をついていく。数人が馬車の後ろで木の枝で地面を引きながらついてくる。馬車の痕跡を消しているのだろう。かなり慎重な連中だ。馬車が通るのもやっとな木々の隙間を進んで行くと、彼らの野営地らしき場所に着いた。姿は見えないが、今度はたくさんの視線を周囲から感じる。

「ミトソ」

 エルフの一人が木の上から下りて来た。格好からしてこの人物がエルフたちの指揮官らしい。青緑色の髪を生やし、顔には横一文字に生々しい傷跡がついていた。

「うん? 僕の名前を知っているし、その顔の傷……オリザ?」

 どうやら知り合いらしい。この元神はエルフの国にも知り合いがいたようだ。

「わざわざこんな時に、こんな方法を使ってまで来るとは、貴様の強欲ぶりは人間以上だな」

「情熱と言って欲しいね。僕は美味しい酒の為ならどんな危険も犯しても飲みたいからね」

 こうして、私たちはエルフの国に入る事が出来たが、歓迎とは程遠い扱いだった。

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