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51話

「王様のお酒か。それはまた大きく出たね」

 ミトソは軽口を言うが、本人もアルマニャックに興味津々だ。

「あれだけの量じゃ一人分しか出来ないわね。もっとも、そんな量を飲む物じゃないから当然だけど……」

 アルマニャックを入れたコップをミトソに差し出す。

「飲んでみてお酒の神様。この世界で出来た初めての蒸留酒、是非味わってみて」

 ミトソはアルマニャックを受け取ると、まずは香りを確認する。本来は樽で熟成させるのだが、今は量も少ないので木製のジョグで代用して造った。それでもワインよりさらにアルコールと葡萄の深い香りが感じられるはずだ。

そして、彼は一口アルマニャックを口にする。まるでプロのソムリエの様な飲み方だ。流石酒の神というだけあってただの呑兵衛とは違う。

「うん、濃縮しただけあってかなり強いアルコール度数だ。敢えて出来たてじゃなくて熟成させたのは葡萄の風味を引き出すためかな……」

 ミトソがアルマに笑顔を向ける。

「王様のお酒、とてもいい物だ。お姉さんを見直したよ」

 酒の神からも太鼓判を押された。思わずガッツポーズをして喜びを隠しきれない。ただの酒好きでも造った物が認められるのは嬉しい物だ。

「私にも是非飲ませてくれ!」

 見守っていたアブールが我慢できず身を乗り出して叫ぶ。初めて飲む蒸留酒を是非彼にも味わってほしかった。

「何という酒だ! 口が燃えるように熱い!」

 初めて飲む蒸留酒の強いアルコールはまだ慣れないだろう。だが、この強いアルコールと味に病みつきになるはずだ。

「これは立派な発明だ。嬢ちゃん、私と一緒に帝国の学会で発表しよう!」

「それは止めとくわ。そもそも酒の密造は帝国法違反で、処刑されちゃうわ」

「ああ、なんたる悲劇! 学問の発展がこんな事で阻害されるとは! だが私は諦めないぞ。製造法を確立し、後世に残さねばならぬ! これはその価値のある物だ!」

 羊皮紙を取り出し、彼は早速蒸留酒の製造法について分かった事を記し始める。

「このアルマニャックって奴、もっと飲みたいけど大量に造れないかな?」

 ミトソがアルマに質問する。やはり相当気に入ったようだ。

「蒸留するからかなりの量の葡萄酒がいるわね。それと熟成させられる場所も必要よ。材料だけなら葡萄だけじゃなくて他の果実や穀物でも可能だけど……」

「ならば西方を目指すのだ!」

 話を聞いていたのかアブールが口をはさんだ。

「西方のエルフの国、あそこは多くの自然を残し、酒の材料には事欠かさないだろう。それにエルフたちは皆私のように知的好奇心旺盛だ。蒸留酒もきっと気に入る!」

 帝国と戦争状態にあるエルフの国、やはり、酒を造るためには向かわなければならないようだ。まるで運命がそう導いてるかのようにアルマは感じた。

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