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49話

「それで、この薬草酒はまずどうやって造ってたの?」

「この手製の調合台を使っている。薬品の調合、抽出、蒸留を可能とし、側には私が見つけた73種類の薬草が用途に合わせて保管されている。この中から様々な組み合わせを考え、効能を確認するため村人たちに渡している」

 さらっと、村人を実験台に使っていることを言っているが、本当に悪人ではないのだろうか? こういう科学者は普通の人と道徳観や倫理観が違うから末恐ろしい。

「え、ちょっと待って蒸留が出来るの?」

「そうだ。効果の薄い薬草は水に溶かして濃縮させた方がいいからな。それを軟膏や丸薬にして……」

「そんなことより! 薬草酒は蒸留しなかったの? これまで、一度も?」

「嬢ちゃん、私を信用してないのだろう。酒は煮出せば風味が消えてしまう! ただの温水になってしまう! それ位のこと学者として知ってて当然……」

「逆よ! この世界はまだ蒸留酒の概念がないんだわ……ちょっと待ってて!」

 アルマは外に飛び出してミトソを探した。ミトソは外で馬と一緒に戯れていた。

「ねえミトソ、ちょっと荷台にある葡萄を使わせて。あれをワインにして欲しいの」

「うん? 別にいいけどあのアブールって奴と薬草酒を造るんじゃないの?」

「いえ、それよりももっといい物を造るのよ。これまでこの世界には存在してないかもしれない凄い物を……うふふ」

 アルマが不気味に微笑むのを見て、ミトソも少し寒気がして馬に体を寄せる。あの薬草医の酒で彼女はおかしくなったのだろうか? そんな不安を感じた。

「いいけど、全部は駄目だよ。帝国の葡萄は高級品だから大事に少しずつ使わなきゃなんだから」

「大丈夫、ちょっと様子を見ながら数個分の果汁を搾り取って、水でかさ増ししたやつで十分だから。そうしたら、あなたの力で発酵させて」

 そう伝えると、早速荷台から葡萄と発酵用の容器を用意して、果汁を濾しながら搾り始める。

「これをお願い!」

 半分ほど水でかさ増ししてなみなみと容器を満たすそれを、ミトソが酒の神の力で発酵させる。

「いくら葡萄酒と言っても、これだとちょっと味が薄くなっちゃうんじゃない?」

「これでいいのよ。まだ完成じゃないから」

 出来た葡萄酒を今度はアブールの所へ持って行く。ミトソが一瞬で葡萄酒に発酵させている光景を見て、驚きの声を上げる。

「葡萄の果汁が一瞬で葡萄酒に……こんな事はありえん! 法則を超越している! まさに神の御業だ!」

「本人曰く元神らしいわよ。それよりこの葡萄酒を蒸留させて」

 アルマは自分が歴史の瞬間に立ち会っていると思っている。この世界に存在しない蒸留酒をの完成の瞬間を。

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