43話 帝国の思惑3
「それで、結局魔女の足取りと行方はつかめず、おめおめと帝都に戻ってきたのか?」
帝都にある元老院。帝国の政治を担うブランドハウスと呼ばれる上位貴族たちが集まり、彼らを通して皇帝の意志が伝えられる実質的な帝国の最高機関だ。その議会場に、騎士団長のデュオンが貴族たちと対面している。
「許可もなくドワーフの国に侵入して、向こう側にはバレなかったもののこれは大問題だぞ」
デュオンの独断行動について彼らも動かざるを得ないことになった。一歩間違えれば帝国の資源入手先がなくなるのだから、騎士団の同盟国への無断侵入はそれほど問題行動だったのだ。
「しかし、件の魔女は商人と一緒に国境を越えてドワーフ国へ侵入したといいます。商人ギルドが裏で魔女と繋がっていると考え、特別行動をとらせていただきました」
相手が貴族だろうとデュオンは物怖じせず、自分の行いを平然と答えた。自分に非がないのであれば、遠慮しない動揺は印象を悪くする。
「商人ギルドが何だというのだ。それに、その商人ですらほぼ何も知らない無関係だったと聞くではないか」
「仮にギルドの一員が魔女を補佐していた所で、そいつは末端だろう。ギルドからしたらいなくなっても構わない様な連中だ」
ロンの事を言っているのだろう。デュオンも彼を尋問したが、彼が違法に帝国の武具をドワーフ国へ横流ししていたことは気づかなかった。
「この件は流石に見過ごす事は出来ない。デュオン団長、お前には西方のエルフ国との戦いに赴いてもらう。これからすぐに」
「了解しました」
この通告は事実上の左遷だ。それでもデュオンは言い訳をしなかった。過程はどうあれ魔女を捕まえる事が出来なかった。礼をするとデュオンは議会場を出て行った。
「魔女はそれほど危険なのか?」
「帝都の混乱は自分で体験したでしょう。しかし、死者は出ていないしそれほど危険ではないかと」
「それより本当に魔女は商人ギルドと繋がっているのか? 商人ギルドが手を貸す何かを魔女は作れるのか?」
デュオンが去った後もブランドハウスの貴族たちが議論を続ける。魔女の脅威は? 商人ギルドとの関係は? 今後の展望を盛んに協議し合う。
「今のところ魔女の行方は不明。それらしい報告もなし。今は無視しても構わないだろう」
ブランドハウスの中でも影響力のあるジャバー・シャット―が答えを出す。
「皇帝陛下にとって魔女よりもエルフとの戦争の方が重要だ。この件で帝国騎士団にも戦場へ向かってもらう口実が出来た」
帝都の治安を守る騎士団だが、今は外敵との戦争の方が優先事業だ。デュオンにとっても戦争で剣を振るっていた方が気持ちがいいだろう。
「商人ギルドへの監視にはうってつけだったが、まるで我々も監視されてる様な気分だった」
デュオンの思想は元老院のブランドハウスたちも辟易していた。騎士の癖に内政にまで口を出す。しかし、これで暫くはうるさい者がいなくなったと彼らも安堵した。




