4話
こうして彼女は20年過ごした修道院を追い出された。残ったのはこっそり友人の修道女から渡された一個のパンだけを手にして。
「また、やってしまったわ……」
また、というのは前世からの事だ。前世で亡くなったのも酒を飲み過ぎたことが原因だし、今回の追放も加減を忘れて飲み過ぎたからだ。酒は飲んでも飲まれるな。大事な教訓である。
「これからどうしましょう」
この世界で生まれて20年、修道院で過ごしてきたため殆ど外の世界の事は知らなかった。近くの村からたまに人がやってくること、定期的に巡回に来る領主たちの言葉から、この土地は帝国と呼ばれる国の都市に近い事くらいだ。わたしは実際に修道院の外に出たことは殆どなかった。だから修道院の外の世界に関しては全て推測に過ぎない。
「都市は馬でも一日かかる距離らしいし、歩いて行けるのは近くの村までかしら?」
あるのはパンの入った袋一つ。通貨になる物は何一つなかった。文字通り身体一つで追放されたのだ。
「村まで行けばきっと何かしら助けになってくれる人がいるはずよ。大丈夫大丈夫……」
今必要なのは屋根のある寝床。それさえ見つかれば、後は修道院で培った知識が役に立つはず。楽天的に前向きにアルマは考える事にした。
「さあこの道を行きましょう! 行けば分かるさ!」
大体人がやってくる方角へ街道をアルマは歩き出した。それが思い出した最初の記憶。自分は異世界へ転生した事、住んでいた場所を追放された身である事。まだどうして処刑されることになったのかは分からない。その記憶の続きをさらにたどっていく事にした。
しばらく道を歩いていると思っていた通り村があった。その村の裏にはうっそうと生い茂った森が存在しており、恐らく林業で成り立っている村だろうと推測した。
「薪割り位なら修道院でもやっていたし、女性でも何か人手が欲しいはず!」
きっと働き口があると思い、アルマは浮足立って村へと向かった。
村に着いたアルマはまず目についた大きな家屋へと入って行った。そこは旅人向けの宿屋らしく部屋は大部屋の食事所となっており、上の階が寝屋になっているようだった。長机の前に主らしい中年の男性が暇そうにたたずんでいた。入ってきたアルマを見て一瞬目が光ったが、身なりを見てお金を持ってなさそうと分かったのかため息をついて視線をそらした。
「あのう、ちょっとお尋ねしていいかしら……?」
「何だい嬢ちゃんここは宿場だよ。泊まりに来たのかそうでないのかそれ以外は出来ないよ」
主はぶっきらぼうに答える。
「ここで働かせてもらえないかしら? できれば寝る場所と食事付きで……」
「はぁ? 周りが見えないのか嬢ちゃん? 一人も客がいなくてこちらは暇で仕方がないのに人を雇う余裕がありそうに見えるか?」




