33話
ミトソはノックノックを出てある人物を探していた。確認したいことがあったからだ。アルマが美味しい麦酒造りに躍起になっているが、彼からしたら結果は分かっているので、いても暇だったことも理由である。
「ここにいたんだおじさん」
町の一番大きな宿屋で商人のロンを見つけた。丁度食事中でドワーフパイを食べていた所だった。
「やあ少年、お兄さんって呼んで欲しいけどまあいいや」
ミトソが隣に座る。食事は頼まなかった。元神である彼は食事を必要としない。酒を飲む時ついでに口にするくらいだ。
「お姉さんは一緒じゃないのかい? 僕としては彼女も一緒の方が会話相手が増えて楽しくなるんだけど……」
「ちょっと気になる事があったから聞きに来ただけ。アルマは……まあちょっと用事があって手が離せないんだ」
「それで、聞きたいことって?」
「お兄さんは何で、帝国の武器や防具をドワーフたちに売りつけてるの?」
単刀直入にミトソは尋ねた。最初ロイはドワーフたちから商品になる物を買い付けに来たと言っていたが、一緒にこの町に向かってる途中、気になって馬車を調べると、帝国で使われている剣や槍が隠されていた。恐らく密輸品として彼は運んできたのだろう。門番に賄賂を渡してまで。
「君はただ者じゃないねぇ。帝国の騎士団とは関係なさそうだけど何者だい?」
「ただのお尋ね者だよ。大体お兄さんと同じことをして、ちょっとドジ踏んだだけのね」
「商人ギルドとも無関係みたいだけど、それでこっちに逃げてきたわけだ。前にギルドから連絡があったけど、帝都で起きた事件も君たちの仕業かい?」
流石商人ギルドは耳が早い。こんな末端にも既に情報が回っている。
「僕はただ、戦場で拾った武器をドワーフたちにいっているだけさ。元手も必要なくて結構利益になるから」
「帝国の装備はほとんどがドワーフたちの採った鉱石資源で出来ているからな。彼らも喜ぶだろう」
皮肉気味にミトソは答えた。同盟国のドワーフたちは採った資源を殆ど帝国に渡すことで平和を得ている。
「彼らも喜んでると思うよ。せっかく採った鉱石をはした金で奪われて、持ち前の鍛冶技術を活かせない。だから僕みたいな何でも屋が、戦場で残された武具を集めてドワーフたちに返す。お互いにお得だろう?」
「帝国法では違法だろう? そもそもそうやって時間をかけて弱体化させてるのに、お前たちは裏でその邪魔をしているわけだ」
同盟国の名の下にドワーフたちから帝国は搾取をして、その支配力を徐々に高めていくつもりなのだろう。だからこそ、金属製品はドワーフたちに高く売れる。ロイはそういう密輸で商売している闇商人だった。




