31話 デュオンの思惑2
「如何しますか団長?」
「うむ、本来なら帝国の貴族たちと同盟国のドワーフどもに許可を求めればならないが……」
そんな手続きを待っていれば間違いなく魔女の行方も分からなくなる。ただでさえ追うのに一日無駄にしている。これ以上日を経過させていたらいつまで経っても魔女を捕らえることなどできない。
「あの時、馬だけでも無事だったら同盟国を巻き込むことなどなかったのに……!」
魔女が逃げたあの日、帝都中の人間が強烈な酒の匂いで酩酊した。それは人間だけでなく、騎士たちの馬も同じだった。そのせいで魔女をすぐに追いかける事が出来ず、酔いが醒めるのに一日かかった。今でも帝都では混乱が続いている。何人かの騎士をその対応にあたらせている。
違法品の中でも酒は特に厳しくデュオンは取り締まっていた。ただでさえ忌まわしい過去を思い出す物だが、飲んで酔う人間ですら彼にとって嫌悪の対象だった。普通の人間ですら酔えばふらふらになり、時にはその性格さえ変えてしまう。酒はそんな恐ろしいものだと彼は考えていた。
「こうなったら馬を下りて私が小人数だけで行く。ドワーフたちに気づかれない様に旅の人間を装う」
残りは帝都に戻らせて通常の仕事に戻る。必要であれば騎士団が使う連絡用の文鳥で状況や指示を送る。デュオンはそう部下に伝えた。
「やはり魔女は危険な存在ですか?」
デュオンの執念深い追跡を見て部下の一人が尋ねた。
「お前も実際に味わっただろう。町一つを混乱に陥れる力を持っている。そんな奴を見過ごすわけにはいかない」
帝都中を酩酊させたのはミトソだったが、デュオンはアルマの仕業だと思っていた。ミトソは魔女が呼び寄せた使い魔くらいにしか考えていなかった。
「それに、もう一人一緒に通っていったという行商人も気になる。もしかしたら商人ギルドが魔女を匿っているのかもしれん」
商人ギルドは金のためなら帝国法に反することも平気で行う。これまでも違法品の裏取引や物資の横領なども関与してきていた。だが、それらの時はことごとく証拠を消して無関係を装ってきた。今回の魔女も奴らの関係者である可能性が高い。捕まえて証拠を吐かせれば、ギルドの力を削ぐ口実になる。だからなお更ここで逃がすわけにはいかない。
「門番が言うには、その行商人はすぐ近くの鉱山町に向かったという。そこまでなら身分を隠したまま調査を行えるはずだ。行くぞ」
彼の本来持つ正義感と意志の強さは執念深さとなって、アルマたちを追い詰めていく。




