26話
「商人か? それにしては護衛も付けず、女子供まで……」
「人手が足りないんでさ。同盟国に行くのにわざわざ護衛を付ける必要ないんじゃないかって……だから手伝いに親戚を連れて来たんだ」
「荷物を見分しても?」
「商品はこれから買い付けに行くんでね。今は自分たちの日用品しかないよ」
「そうそう。ほら、食用の小麦くらいしかないぞ」
ミトソが横から口を出して、実際に小麦袋を見せる。私たちのほぼ唯一の荷物だ。
「そういうわけでね。見せられるようなものは何もないんだ」
ロンが何気なく門番に一歩近づくと、何かをすっと手渡すのをアルマは見逃さなかった。
「そうか、じゃあ気をつけてな。通っていいぞ」
門番が他の仲間に合図を送って門を開く。これで帝国から離れる事が出来た。ここから先はドワーフの国という事になる。
「ねえ、ちょっと……」
「どうしたの? これでしばらくは追手も来れないはずだよ。目的地の町までは一日半ぐらいで着くと思う」
「そうじゃなくて!」
アルマはロンが門番に何かを渡していた事をミトソに話した。
「あれ、賄賂って奴じゃないの? だから門番もすんなり通してくれたんじゃ……」
「僕は初めから怪しいとは思ってたけどね。騎士団の護衛も付けず単独で行商に向かってるなんて……だから便乗して一緒についてきたわけ」
悪びれもせずミトソは言った。賄賂を贈る怪しい行商人に力を失った元神、そして追われる脱走者。とんでもない組み合わせだ。こんな調子で本当に安全な場所に着けるのだろうか。アルマは先の事を考えるのがたまらなく不安になってきた。
すっかり気分が落ち込むアルマをよそに、馬車はどんどん進んで行く。初めはなだらかな道だったが徐々に勾配が上がってきて、道幅も狭くなっていく。山沿いを伝っていく道のりへと変わっていく。
「ドワーフの国は小さくて山々に囲まれた場所にあるけど、そのお陰で帝国からの侵略にも耐える事が出来た。それで一応は同盟国として帝国と共存する道を選んだ」
野営の時、ロンには内緒でミトソがそう教えてくれた。自分たちはドワーフ国の移住者だから、ある程度常識としてドワーフたちの事を知っておくためだ。
「農耕には不向きだけど金属資源は豊かで、彼らは鍛冶技術を発展させたんだ」
流石、元神だけあって実際に見てきたようにミトソは話す。
「それに彼らもお酒は好きだ。帝国の支配も緩いからこっそり密造して自分たちで飲んでる人々ばかりだった。因みにお酒の造り方を教えてやったのは僕だ。簡単な酒造りを教えてやって一緒に彼らとよく飲んでいたよ」
さらっと、帝国法に反する知識を教えた事を話した。ミトソは酒の神というより悪魔なのではなかろうかとアルマは思い始めた。




