25話
「どうかしたのかい?」
「いえ、何でもありません。そうです。私たちはドワーフたちの住む国に移り住んだ移住者の一族ですハイ」
「同盟なんて言っておきながら、実際はドワーフたちのいる土地の資源を搾取しているだけさ。それで今でも南のエルフや西の蛮人たちと戦っているんだから」
ミトソの口からまた聞いたことのない単語が飛び出した。前世では聞いたことあるけれど、この世界にはドワーフやエルフが実在しているようだ。
「おいおい、言葉には気を付けなきゃだぞ少年。騎士団の連中が聞いたらいくら子供でも、その口を塞ぎにすっ飛んでくるぞ」
「そういうおじさんだって、これからドワーフの国に向かうんでしょ。帝国への貢物を受け取りにさ」
「手厳しいなぁ……それにおじさんじゃなくてロンお兄さんと呼んで欲しいな。僕もまだ若いんだ」
ロンという名前の商人は、ドワーフの国から資源を買い取って帝国の商人ギルドへ輸送するのを主な仕事にしていると言った。その時に、細々した人気の出そうなドワーフたちの作った雑貨等も交換して、帝国で売ってるという。
「こういう同盟国への買い付けや租税の輸送なんて商人ギルドじゃ末端の仕事さ。早く自分の店を持って腰を据えて商売したいよ」
そんな風に彼の人となりを聞きながら街道を進んで行く。アルマはずっと修道院で過ごしていたため、自分が外の情報を全く知らないことに気が付いた。帝国の事も、その周辺や人間以外の種族の事も、彼女にとってはみんな新鮮な知識だった。
「私、何も知らなかったわ」
「僕はこれでも元神だからね。そういう時事情報なんかは常に頭に入れてるんだ。これでも常に辺りを転々としていたから」
だったら早く教えてくれてもよかったのに。ミトソは聞いたことしか答えてくれないから、前提知識がないと何も答えてくれない。それに、転々としているのは密造で逃げ回っているだけではないかとアルマは思った。
「お、二人とも検問所が見えて来たぞ。門番の機嫌を損ねるようなことはしないようにな。特に少年」
「検問所!」
国境を抜けるわけだから、検問所くらいはあって当然だ。しかし、自分たちは追われてる身だが、無事に通り抜けられるのだろうか。
「ちょっと、検問所があるなんて聞いてないわ。大丈夫なの?」
「大丈夫でしょ多分。あのロンって人と上手く口裏合わせれば通れるさ」
やっぱり行き当たりばったりじゃないのこの神、いや元神は! 内心気が気でない状態でロンと門番のやり取りを見る事のなった。どうか無事に通れるように、アルマは誰とも知らない神に祈った。




