24話
「そんな事言っても、今は道具も材料もないじゃない」
「実はこれから向かう所にはちょっとしたツテがあってね。多分大丈夫なはずだよ」
「多分って……」
どうも行き当たりばったりな気がする。これも人間でなく神であるせいなのだろうか。
「それに材料なら麦が一袋馬車に残っているじゃないか。馬車の主が積み残したやつが」
この馬車も元は他人ので、ミトソはそれを勝手に持ち出してきたようだ。また一つ罪が重くなった。
「少なくとも、私はお酒以外の物も食べたり飲んだりしないと生きていけないの。お酒はあくまで嗜む物、嗜好品なのよ」
まずは目の前の問題を解消しなければいけない。生きるための糧の確保、追手からの逃走……問題は考えればそれだけ積み上がって、とてもすぐに解消できる気がしない。ましてや酒の密造道具の確保なんてずっとずっと先の問題だ。
「もうすぐ目的地の国境に入るから、今日中には着くって……うん?」
前方に自分たちと同じ荷馬車の後ろ姿が見えて来た。こっちは殆ど何も積んでないので、荷物を運んでいる前の馬車に追い付いてしまったようだ。
「この道を行くって事は目的地は同じ人かな」
「大丈夫? 私たち追われてる身なのに怪しまれたりしたら……」
「いや、ここは同業者のフリして一緒に行った方がいい」
そう言ってミトソは前を行く馬車に追い付き、御者に挨拶をする。
「はい、一人でお仕事ご苦労さん」
「うわっ! 何だい君は……その年で御者してるのか?」
御者はまだ若いがそれでもアルマよりは年上そうな男性だった。
「姉弟で働いてるのかい? まだ若いのに大変だね……」
「ええまあ、そんな所です」
とりあえず話を合わせる事にする。
「これから帰る所なんです。都でその……働き終えたばかりなので」
「へえ、という事は君たちドワーフかい? とてもそうには見えないけれど……」
ドワーフ? ドワーフってあの背が低くて屈強そうなひげもじゃの小人のイメージが思い起こされた。
「三代前に移り住んだんです。丁度彼らの鍛冶技術に目を付けた先代が商売の為にね。おじさんもその口で?」
「おじさんって僕はまだそんな年じゃないけれど……まあ君たちと同じような物さ。彼らと帝国の間を仲介して商売をしているんだ」
商人のお兄さんにばれないようにミトソに耳打ちする。
「ねえ、もしかして私たちが向かってる場所って……」
「そうだよ。帝国と同盟を結んでるドワーフたちの国に向かってるんだよ」
この世界には人間以外にも違う種族がいる事をアルマは初めて知った。修道院ではそんなことを教えて貰わなかったし、見たこともなかったから。
書いてすぐの投稿のため推敲が甘い箇所があるかもしれませんが、誤字脱字の報告を上げていただければありがたいです。




