23話
かつて、この世界は大小さまざまな国が争う混沌とした時代があった。国によって信仰する神が異なり、自分たちの信奉する神を力で他の国に強要させていた。信仰心は神々にとっても自分が存在するために必要な物であったため、時には人間に力を与え手を貸すことで信仰を得ていた。
だが、ある一つの小国が他の国を次々と侵略し、負けた国の神を追い出して自らの信仰する神、戦の神を信仰する様に強要させた。反対する国を尽く打倒していき、やがてその国は帝国と呼ばれるようになった。
帝国は厳しい規律と秩序を重んじて、逆らうものには容赦なく罰を与える。そうして信仰を強制し、帝国法と呼ばれる統制と規律によって栄えてきたという。
「それが帝国の誕生の歴史ってね」
「修道院でも習ったわ。神の秩序と規律が人々をまとめ、繁栄したとその時は習ったけど」
馬車で街道を行きながら、アルマと酒の神である少年は話していた。
「はっ、秩序と規律ね。僕から言わせれば、人間の行動一つ一つまで干渉しなきゃ気が済まないだけだと思うね。戦の神の奴はそういう奴だよ」
しかし、常に酔っぱらってふらふらしてる人間と、真面目にルールを守ってきびきび動いてる人間ならば、戦ったとき後者の方が勝ちそうだ。恐らくそういう風にして負けて彼は神の座から堕とされたのだろう。
「神様にも名前ってあるのかしら? 私、まだあなたの名前も知らないんだった」
「勿論あるよ。人間には色々な名前で呼ばれていたけど、その中で気に入ったのはミトソって名前だったかな」
「じゃあ今から私もあなたの事をミトソ君って呼ぶわね」
「僕は神様だよ。呼ぶならミトソ様って呼びなよ。恐れ多いぞ」
不満そうだが、今は信仰を失って殆ど力のない元神だ。助けて貰った恩はあるけど、元はと言えば、彼の手伝いで酒の密造を手伝ったせいでもあるのだからおあいこだろう。
「それよりも、今は何処へ向かっているの? 元いた村には帰れないし、私たち追われる身よ」
少なくとも帝都からは離れているのだろうが、いつ追手が来るかも分からない。そんな中で酒の密造なんて出来るのだろうか。
「それなら安心してよ。今は北に向かっているけど、帝国の属国となってもある程度自治が認められてる国があるんだよ」
帝国法にこそ従っているが、帝都から離れているためその影響力と強制力は帝国本土ほどではないという。そこまで行けば帝国の追手もそう簡単にやってこれないはずらしい。
「そこでなら安心して酒が造れるはずだよ。僕も早くまた酒が飲みたいし、早くそこへ向かわないとね」
ミトソは酒を造ることと飲むことしか考えてないようだ。しかし、アルマもそろそろ酒でのどを潤したい。20年はそれなしで生きてきたはずなのに、酒の味を知ってからは生活に欠かせないものとなっていた。酒の誘惑は存外馬鹿にできない物だと彼女は思った。
ここから毎日新規で書き始めているので、誤字や改変があったらその都度改稿していく予定です。




