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21話

「どうした? 何をしている!」

 集まっている人だかりの奥の方で何か騒ぎ声が聞こえてきた。そういえば公開処刑は昔は娯楽として見られていたと聞いたことがある。非日常の景色は無関係の人間にとっては、見世物とそう変わらないのだろう。お酒を飲むことすら禁じられてるのだ。こういう光景はそれこそ刺激的な物に見れてしまうのだろう。

「誰か止めさせろ! 興奮するな! 興奮……」

 デュオンが部下を向かわせようとしたときだった。心地よい風がアルマに向かって吹いてきた。それはあの廃墟で造っていた麦酒の強い香りを感じさせた。

「うっ、この匂いは……酒だ! 誰だこんな強い匂いの酒を持ってきてるのは……!」

 麦酒の香りが帝都の広場を包んだ。アルマにはいい匂いでも日頃酒を飲まない人間にとってはとても刺激的だろう。それも匂いだけで世ってしまう程に。デュオンや騎士たちはあまりの匂いに顔を手で覆ってむせる。見物に来ていた人々も、酔いが回ってふらついたり意味もなく笑ったりしている者ばかりだ。たちまち帝都中に混乱と酩酊が溢れた。

 その中を一台の荷馬車が猛スピードでこちらに向かってくる。御者はあの少年だ。

「やあお姉さん。助けに来たよ」

 辺りの混乱も気にせず、処刑台の前で馬車を停めた少年が言った。

「君は……今までどこにいたの? それにこの出来事は何が起こってるの?」

「何って、お姉さんみたいに僕がみんなにお酒をふるまったのさ。匂いだけだけど、普段酒を飲まない連中にはこれだけで十分でしょ」

 少年は処刑台に飛び乗ると、いともたやすくアルマを解放する。

「ほら、お姉さんも行くよ。今度は別の場所でお酒を造ろうよ」

 この混乱は少年が起こしたものだという。だとすれば、この少年はただの人間ではないのだろう。それこそ神様かもしれない。少なくとも今の彼女にとっては救いの神ではあろう。

「貴方は何者なの?」

「説明は後。ほら、早く行くよ」

 馬車に飛び移った少年の後に続いて、アルマも荷台に飛び乗る。すると、すぐに馬車は動き出し、広場から離れていく。

「待て! くそっ……馬を用意しろ! 魔女め! 絶対に捕まえてやるぞ!」

 私のせいではないのだけれどとアルマは思ったが、かといって完全に無関係でもない。酔っぱらった人々で溢れ返る帝都から抜け出して、馬車は街道を走り続ける。

「ねえ、どうして私を助けてくれたの?」

「お姉さんがいないと、酒を造る手伝いがいなくなってしまうでしょ。だから迎えに来たんだよ」

「さっきは聞きそびれたけど君は何者なの?」

 アルマはかねてからの疑問をようやく尋ねる事にした。

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