17話
それは酒宴を行う事が決まった日、村長に用意が出来たことを伝えに行った時の事だった。
「村長さん、調子はどうかしら?」
「この辺は娯楽も少なくて退屈そうな顔をしていた村の者たちも、あれから何時やるのかみんな楽しみにしておる」
「こっちも準備が整ったから、今夜みんなを集めてくれる?」
「おお! それなら伝えておくわい。わしも待ちきれん!」
やっぱり話しておいてよかったと思ったアルマが外に出ると、間の悪い時に物騒な格好をした一団が村にやって来ていた。鎧を身にまとい、持っている旗や盾には不気味な蜘蛛の紋章を入れた騎士団だった。その中で厳つい顔をした騎士が、村長の家から出て来たアルマを睨みつける。
「この辺りの人間の顔は全ておぼえるようにしているつもりだが、見ない顔だな。女、お前は何者だ」
横柄な態度に少しむっとしたが、相手は騎士だ。逆らっても何もいい事はない。しかし、修道院を追放されたと正直に言うのもはばかられた。理由が理由だ。追及されたら自分の犯した罪がバレてしまう。何と言おうか迷っていると、村長がやってきて慌てて間に入る。
「この子はわしの遠い親類で、最近手伝いのためにこの村に呼んだのです。それよりも帝都を守る騎士団様が一体こんな村に何の御用ですかな?」
帝都の騎士団? という事はこの辺の領主なんかよりもよっぽど偉いだろう。それがどうしてこの村に?
「帝都への官物を送る途中で立ち寄ったまでだ。この辺りの物ならば直接帝都へ運ばれるが、遠方からの物は商人ギルドの連中が関わるのでな。大切な品に手をつけてないか、確認する必要があるのだ」
騎士団の男はそう答えた。その間も、疑い深くアルマの事を見ている。
「邪魔をしたな。我らは行く」
そう言って騎士団は村から出て行った。姿が見えなくなってようやく緊張が解けた。
「あれが帝都の騎士団?」
「そう、農産品の徴収や帝都の警備が主な仕事のはずじゃが、かなり厳しく取り締まりを行っておる。特にさっき話していた団長のデュオン殿は容赦がない事で有名じゃ。犯罪者をその場で切り捨てたとか、少しでも作物を納める期日を守れなかった村の者全員に処罰を行ったりと」
そんな人間に酒の密造がバレたら問答無用、その場で処刑されてしまうだろうとアルマは想像しただけでぞっとした。
「さっきの話、多分聞かれてないはずよね。予定通り夜にまた会いましょうね」
団長のデュオンという男の冷たい視線を思い出しながら、アルマは少年のいる廃墟へと戻った。




