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14話

「お帰りお姉さん! その様子だと交渉は無事成功したみたいだね」

 廃墟に戻ってくると、少年は一人で密造を進めていたようで麦汁造りの行程を行っていた。そういえば、大量に造るには麦の量が足りないんじゃないかと気づいたが、いつの間にか地下室には麦の詰まった麻袋が大量に積まれていた。

「どこからこんなに集めてきたの? というかこれならあたし必要じゃないんじゃない?」

「それは内緒。でも、これだけの麦を集めるのは大変なんだから。それに造る量も増えるからお姉さんの手伝いは欠かせないよ」

 少年は宿屋のおじさんから貰った包みを開けて中身を確認すると、嬉しそうに声を弾ませた。

「酵母の代わりになりそうなパンに、美味しそうなチーズも! やっぱりお酒にアテは必要だよね~ご苦労様!」

 まあこれでしばらくは食事にも困らないのは事実だ。やっていることが違法という事に目をつぶれば。

「ああ神様、罪深いあたしをお許しください……」

 既に地獄行きは確定だろうが、アルマは神様に許しを請うた。そうでもしなければ、この生活を続けていくのに自信が無くなりそうだった。

「ん、何か言った?」

「何もないわ。それじゃあ後は何をしましょうか……」

 生きるというのは厳しい。それは前世でもそうだったが、転生先でも違う意味で厳しい生活を送る羽目になるとは思いもしなかった。真っ当に生活できるお金と道具が揃ったらすぐに足を洗おうとアルマは思った。

「ふっふっふ、驚かせようと思ってお姉さんには黙っていたけど、実は今回麦だけでなくこいつも手に入れたんだ」

 そう言って少年が手を差し出した。その掌には麦とも木の実とも違うある物があった。

「これは、ホップね!」

 ビール造りには欠かせない材料のもう一つ。ホップと呼ばれる植物の毬花だ。ビールの保存を良くするだけでなく、芳醇な香りやきりっとした苦みを生み出す重要な素材だ。

「流石お姉さん分かってる! 美味い麦酒を造るにはこいつが不可欠さ!」

 麦汁を煮詰める時とその後の発酵する直前に使う事で、ビールの質を格段に上げる事が出来る。現代のビールには必須ともいうべき代物だ。

「いくら大量に造っても、腐らせちゃ意味がないからね。だから今度からはホップも使ってもっといい麦酒を造っていくよ!」

「ラジャー!」

 アルマは俄然やる気を出して少年の密造に力を貸した。結局のところ、美味しいビールが飲みたいという欲求には抗う事は出来なかった。そうして、高く上がった日が落ちて満月が辺りを照らす夜になるまで、アルマと少年は麦酒を造り続けた。

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