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117話

「何から何まで本当に感謝する。もし出来るのであれば、葡萄酒とは別にこれも軍へ支給してくれないか? 出来る限り援助をするぞ!」

「お嬢ちゃん、俺にも後でそのジュースの製造法を教えてくれ! 軍がお得意様になってくれれば、小さな個人雑貨屋でも、食うのに困る事はなくなる!」

 ロンも葡萄ジュースに関心を持ったようだ。アルマは新たな酒の材料を探しにミトソと世界を回ってみる予定だから、ジュースの販売はロンに任せようと思った。

「では、私はこれで失礼する。南方で苦労している兵たちの癒しになってくれるはずだ。この恩は決して忘れないだろう!」

 そう言ってデュオンは再び仕事へと戻っていった。酒造りの副産物で生まれた物が、こうしてまたも役に立った事にアルマは嬉しかった。

「君たちのやる事は、いつも僕の想像を超えた出来事を引き起こすよ」

 ロンは喜びを隠し切れない様子で言った。

「あれを造ろうと言ったのはアルマだよ。僕はせっかく葡萄酒になる物をわざわざ加工するなんて勿体ないと思っていたけど、まさか役に立つとはね」

 ミトソは本当にお酒の事ばかりしか頭にない。アルマも大概だが、周囲に対する気配りの心が、元神であるミトソには出来ない事を引き起こすのだと、彼は感じていた。エグノールスが彼女の力を測り損ねたのも、神にはない周囲への配慮がその理由なのではないかと思っていた。

「流石は僕の認める信仰者だよ」

「もう、私はただみんなで楽しくお酒が飲みたいだけだって!」

「葡萄酒はまだ残っているかい? 今日は本当にいい日だ。もっと葡萄酒を飲もう!」

 すっかり気分を良くしたロンは、2人よりも葡萄酒を早いペースで飲んで酔っ払うと、まだ日も落ちない内に寝てしまった。アルマはロンに毛布を掛けてその場に寝かしてやっていると、ミトソが尋ねて来た。

「デュオンがわざわざ来たって事は、きっとそろそろ戒厳令も解かれる日も近いんじゃないかな? そうしたら僕は帝都を離れるつもりだけど、アルマは本当についてきてくれるの?」

 いつになくミトソが確認する様に尋ねてきた事に、アルマは少し驚いた。しかし、あの徐の考えはエルフの国にいた時から変わってない。

「ええもちろん。それより、準備は出来てるの? アモラ王女に頼んで造って貰った蒸留器とか、食料とか馬車とか……」

「うん、勿論準備してあるよ。今回は大変な事があったからね。気が変わってなければいいなって思っただけさ」

 ミトソが気を遣っているのだと彼女は理解した。この旅で色々あったけれど、彼の中でも何か変わりつつある物があるらしい。

「私、貴方との旅を楽しみにしてるのよ? 早く外に出たくて待ちきれないってくらい」

「ふうん、そっか。僕も楽しみだよ」

 そっけなく顔を背けて言うミトソの耳が少し紅潮しているのは、酒のせいではないだろう。

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